この記事(ウルトラマン裁判)を受けて、
私なりに、チャイヨー訴訟のまとめを。
「ソンポート何たら」(ソンポート・センゲンチャイ)という、
かなり問題のある人物の悪辣ぶりに、
円谷プロだけでなく、
世界各国の裁判所まで振り回されたというのが真相だろう。
前回と同じ話をくり返すのも能がないので、
円谷英明氏の★——
円谷英二の息子、長男の円谷一には3人の息子がいた。
長男が円谷昌弘、次男がこの人、円谷英明。三男は故・円谷浩(本名:寛)
——★「ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗」
から抜粋しよう。
円谷 英明
講談社
売り上げランキング: 200,076
英明氏が、
「日本コンテンツ産業の歴史上、
他に例のない愚劣な契約」
と位置づける内容は、「泣いている」によれば、以下のとおり。
1970年代に円谷プロと良好な関係にあった、
↑『ジャンボーグA&ジャイアント』
↓『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』
タイにある、ソンポートの会社チャイヨープロは、
●「ウルトラマン」から「タロウ」までのウルトラシリーズ全作
+「ジャンボーグA」の、
海外での独占的なキャラクター使用権、商品化権などを、
1976年に、円谷プロから6000万円で譲渡されたと主張。
●当時の社長、円谷皐氏が、
署名捺印した契約書をチャイヨー側が所有。
つい先日の、2016年5月10日の会見で、
↓ソンポートが公表した契約書。
↓こちらが〈翻訳〉だが、どちらも後付け感炸裂。
あくまでも〈翻訳〉の方の、
TSUBURAYA(円谷)がTRUBURAYA(トゥルブラヤ)
なのは単なるタイプミスとして、
作品名も間違ってりゃ、内容もむちゃくちゃな契約書に、
まともな人間がサインするわけねえだろ!
なんでこんなものに、今も世界中が振り回され続けるのか?
円谷プロ社内には、この契約書の存在を知る人はおらず、
契約時に同席し、円谷側に「先生」と呼ばれていたとソンポートが言い張る、
弁護士らしき人物は特定できず終い。
契約書の内容は、
あまりにソンポートに都合がよく、
たかだか6000万円で譲渡などありえない。
だけでなく、
ソンポート/チャイヨー側を超優遇しておきながら、
円谷プロの方が得られるメリットが何も記されていない、
ひたすらに一方的なもの。
しかも契約書の内容に反すること、
円谷プロのウルトラマンシリーズ海外進出の動きが、
↓「ウルトラマンUSA」(1986)
よりによって、契約書にサインした(とされる)
皐社長自身の手によって、
契約締結の76年以降も、長年にわたって続いていたのに、
↓「ウルトラマンG」(1990)
↓「ウルトラマンパワード」(1993)
ソンポート=チャイヨー側はずっと沈黙。
それが、
ことの真相、実情を知りうる唯一の人物、
円谷皐の死後になっていきなり、
つまり契約書がかわされてからおよそ20年経った1995年以後、
チャイヨーは日本国外のタイで事業を展開し、
商品に「円谷チャイヨー・プロダクション」(TSUBURAYA CHAIYO Co., Ltd.)として、
円谷プロに無断で著作権表示を行い始めた。
これを問題視した円谷プロは、
1997年にタイで、
1999年に日本の東京地方裁判所で、
タイ側の著作権などを無効と主張する裁判を始めた。
東京地裁と、それに続く東京高等裁判所で、
円谷プロの訴えは国外の問題として却下。
最高裁判所が、日本で審理可能として差し戻す判断を下した。
(2001年6月)
地裁と高裁の精査の結果は、
●著作権は円谷プロにある
●契約書は有効→海外の販売権はチャイヨー側にある
——として、
最高裁で、円谷プロの敗訴が確定(2004年4月)
??????????
日本の裁判所って、
どんだけアホなの?
情報を総合すれば、
法律のシロウトの自分にだって、真相は見抜ける。
チャイヨーの裁判中の主張では、
1974年の円谷、チャイヨーの、日本・タイ合作映画、
『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』の配給権が、
1975年に香港に12万米ドルで売れたが、
資金繰りに窮していた円谷プロ側は、
この12万米ドルを1年間借りたいとし、
さらにその後チャイヨーに無断で,
円谷が台湾に配給権を8万米ドルで売却したことが発覚した。
1976年3月に来日したソンポートは,
円谷に20万ドルの返却を要求。
???????
なぜ全額を要求できる?
『怪獣軍団』のヒーローキャラ比は、日本7:タイ1。
内訳は、ウルトラ6兄弟+ウルトラの母の7人に対し、
タイ側は、ハヌマーン一匹だけ。
百歩譲って日本:タイで1:1にしても、
チャイヨーの分け前は、
10万ドルにしかならないはず。
これを20万ドル要求するところに、
ソンポートが相手の弱みを握れば、
永遠に身勝手な要求を続ける、
ゆすり、たかり体質が見透かせる。
悪人、犯罪者はウソしかつかないから、言うことがコロコロ変わる。
「6000万円で海外の全権を譲渡された」
という当初の主張が消えている。
おそらくソンポートと円谷皐との交渉は密室で行われ、
『怪獣軍団』の香港と台湾への配給収入を、
皐がソンポートに黙っていたことで脅され、
(帰国する飛行機の時間が迫っている)
「契約の内容は後で書いてタイから送る」
(そのために再来日する二度手間を省く)
と言う口実で、
白紙の円谷エンタープライズの、
海外取引用の英字表記の国際便せんに★——
マイティジャックのマークを引き継ぐ社名ロゴの隣には、
ADVERTISING(宣伝)DISTRIBUTION OF FILMS(TV & MOVIE)(テレビ番組・映画配給)とある。
——★円谷エンタープライズの社印を押させたんだろう。
円谷英二の次男、皐社長は、元フジテレビ勤務。営業のために1968年に設立したエンタープライズの社名ロゴに、同年のフジ放送作「マイティジャック」をあしらったのには、それなりの意味がある。
とか、エラソーに書いたが、
↓円谷プロのロゴだって,基本的には同じだったし、
↓2010年創立の、LSS(LIGHT SCULPTURE STUDIO)まで引き継がれている。
円谷プロと円谷エンタープライズは別会社で、
1976年当時の円谷プロの社印は東宝が管理していたため、
プロ、エンタープライズ両社の社長だった皐氏であろうと、
勝手には使えなかった。
もしもタイに帰国したソンポートから、
ムチャクチャな内容の契約が届いたら、
●ソンポートが主張するのは円谷プロの権利で、
エンタープライズの管轄外だから、お門違い。
●サインが英文なのは、
皐という複雑な漢字が書けないためで、
偽造の証拠。
●社印入りの便せんを渡したのは、
脅しに屈したから
——等々、皐社長はつっぱねられたし、
なにしろ恐喝の証拠が手元に残る。
しかし皐社長の生前には、
空白を埋めた書面(の写し)が、
ソンポートから返送されてくることはなかった。
この件を2人の間だけで収め、表沙汰にしたくなかった皐社長は、
へたに寝た子を起こしたくもないので、
ソンポートに「あの書類の一件はどうなった?」と打診もせずに放置。
1995年6月11日に皐社長がなくなり、
「死人に口なし」状態ができあがり、
いよいよソンポートは、犯行(一連の詐欺行為)に及んだというわけ。
悪人、犯罪者の理屈に、
「自分は悪くない。やむをえず、そうせざるをえない状況に追い込まれただけのこと」
というのがある。
ソンポートが追い込まれた状況とは、
円谷プロのウルトラマン、
東映の仮面ライダーという日本の2大ヒーローに、
タイ国産ヒーローをチョイ足ししただけで、
タイ国内では好き勝手できると踏んでいたのに、
そこらへんがしっかりしている東映から、
キツイおしかりを喰らい、出入り禁止となったため。
『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』(1974)は、
『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』の続編という位置づけ。
これだけで、ソンポートの版権意識がムチャクチャだとわかる。
『五人ライダー対キングダーク』『仮面ライダーV3対デストロン怪人』からの流用映像(予告編含む)と、タイでの新撮映像で構成されている。
なるほど、キングダークという巨大キャラと、ハヌマーンを戦わせるわけね。
あれ?
↓キングダークが等身大に、
↑ハヌマーンも?
東映から、
↓『五人ライダー対キングダーク』
↑(※該当映画作品ではなく、テレビ番組のスチルかも知れません)
の配給権を得ただけにもかかわらず、無断で新撮・編集を行ったため、日本未公開かつ非公式作品という扱いになっている。
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D) (2011-10-21)
売り上げランキング: 69,294
(2014-04-08)
売り上げランキング: 42,320
(2014-04-01)
売り上げランキング: 42,258
↓タイで新撮された証拠写真。
↑雑誌記事だか表紙には、なぜか内山まもるの描くウルトラマンタロウの顔があしらわれていて、もうメチャクチャ。
キャラ混載は、日本の「テレビマガジン」や「てれびくん」みたいなものか。
内山まもる
復刊ドットコム
売り上げランキング: 133,829
もう一方の金づる、
円谷プロに見放されて出禁になったりする前に、
どうにか手を打っておき、
あわよくば永遠にたかり続ける手段はないものか。
そう画策していたところに、
絶好のゆすりのネタが持ち上がり、
ソンポートはウキウキ気分で来日。
「20万ドルを今すぐ払わないんなら、こちらにも考えがある。
条件は後で書いて送るから、とりあえずハンコを押せよ」と、
皐社長が押した社印のある便せんをまんまとゲット。
どう悪用しようかを考え抜き、
相手が鬼籍に入って反論できない状況になってから、
本格的に犯行を開始した。
日本の裁判所が、
契約書は有効と判断した根拠は、
「社印を1000倍まで拡大しても、印影が一致した」
↓
はぁ?
ハンコだけ本物なら、
中身がメチャクチャでも本物になるわけねえだろ!
まさにそこが争点だったのに、
最高裁まで争いながら、
最終判決がこれじゃあ、
日本の裁判所は事実上の機能停止だから、
裁判官も裁判制度も、まったく信用できないね。
とくにこういう問題は、
国際的な版権意識、感覚、常識が問われ、
だからこそタイや中国では、
版権後進国と笑われないように、
また国際問題にも発展しかねないので慎重に審理され、
契約書は偽造と判定され、
円谷勝訴、チャイヨー敗訴になってるのに。
不当判決は、どこの国でも起こりうるが、
たいていは自国民びいき。
日本の裁判所が、いったん却下したのに、
あとから差し戻したのは、
個人でも高い裁判費用を、
企業訴訟だと、さらにガッポリぼったくれるから。
というわけで、
円谷プロは裁判に膨大な費用がかかったうえに、
まさかの敗訴で、踏んだり蹴ったり。
さて、Wikiには、
円谷プロが1996年に出した
譲渡契約の内容を肯定する旨の書簡が
真正に成立していること
——が、契約書が有効という判断の根拠とされるが、
この書簡(手紙)とはなんぞや?
円谷プロの側には、
この契約書の存在を知る人は、
誰一人としていなかったんでは?
もしかして、前回の、
円谷プロ側は、
当初チャイヨー側の言い分を鵜呑みにして
契約書の存在を認めたが、
——ってところだろうか。
そこを精査するのが裁判だろうに、
振り出しに戻ってどうする?
裁判所の誤判決の責任は重大である。
富嶋 克子
イースト・プレス
売り上げランキング: 1,449,379
ダラダラと長くなったので、
とりあえず、今日はここまで。
ウルトラマンだけでなく、
↓ジャンボーグAも泣いています。