この前、
『スター・ウォーズ』1作目(1977)で、
砂漠に横たわっていた骨は、
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別の映画(“One of our dinosaurs is missing”1975)の、
ディプロドクス系恐竜の骨レプリカの流用
だと書いたら、
特にFacebookを中心に、好評をいただきました。
「脇役にしては作り込まれてるんで、前からヘンだとにらんでた」
と言う声もあり、
なるほど、そうだなと思い出した。
1作目『スター・ウォーズ』(エピソード4 新たなる希望)の製作中は、とにかく資金に事欠いたので、あっちからこれ、こっちからあれと、流用、リサイクル、使い回しのオンパレードだったから。
このため、チョイ役や、送り手側が堂々と披露しないプロップには、公(おおやけ)にできない事情が隠されていることがしばしば。
たとえば(〈特別篇〉・1997でCGに置き換えられる前の)デューバックは、
劇中ではロングショットのみで、その詳細な全貌が映し出されることはない。
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宣伝・広報スチルも頭部がアップで、ボディがはっきり写っていないものばかり。
まともな新規造形は頭部のみ。
一応、尾部も新規とは言え、ほとんど画面に映らず。
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しかもなんか、シワがよって、ボコボコ、ペナペナしてるし…。
↓2005年4月に、ボーナム主催のロック&フィルム関連アイテムオークションに出品された、デューバックの頭部。
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↓フリーランスの造形師、フレッド・パール氏の作品。
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尻尾とボディの継ぎ目隠しの布と共に出品されたのは茶色いFRP製の元型で、同じ型から抜かれた2つめがグリーンに彩色されて撮影に使用され、そちらはルーカスが所有しているはず…だとのこと。(現存するかは不明)大判・拡大写真はこちら。
ボディはサイのハリボテの使い回しだった。
↓(上)サイのハリボテを流用することは、ジョン・バリー(プロダクションデザイナー)のスケッチの段階から決まっていた。
(中)シャコ貝のような頭部のトサカは、途中まで検討されていたものの、結局取り払われた。
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(中)ボディに使用されたサイのハリボテは、あくまでもサイの造形としては、そこそこ実物のサイ(下)をよく模していて、デューバック役を終えても、さらに別の映画にリサイクルされ続けたという。
ということは前にも書いたが、もう5年前の記事なので、新画像を含め、ここに改めて、まとめました。
ここからようやく本題だが、そんなこんなで、
1作目『スター・ウォーズ』で、
チョイ役にしてはやけに出来のいい造形物は、
流用を疑うに限る!
となると、アヤシイのは、カンティーナ(酒場)
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に登場するカマキリ女、
ヤムリと言う種族(出身星はハックなので、ハックとも呼ばれる)の女性(メス?)、
キティック・キードカックが最有力候補。
「キティック・キー…? 誰それ?」と思う人が多いのも当然、
本編映像や劇中スチルの、チョイ役ぶりがすさまじい。
↓ベン・ケノービの肩越しに、キティック・キードカックの細長い首と、きゃしゃな三角頭が見える。
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画面の右隅上部に、キティックの黄緑色のカマが写っている。
なにか後ろめたいことでもあるのだろうか、
現存する資料写真は、モノクロが2点だけ。
カマを操作する紐(ひも)がはっきり写ってるのも、劇中で奥に引っ込み、アップで映し出されなかった原因の一つかも。
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カラー画像は、メイキングの動画撮影素材(フィルム)からの転用。
一応、ジョン・モロ(コスチュームデザイナー)のスケッチでは
「カマキリ」とされてはいるにせよ、
↓スカートの中から操作する上半身の姿は未確定(左)なのに、完成形(右)はカマキリそのもの。
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↑カンティーナとモス・アイズリーの街路に集ったエイリアンの集合写真にも写っていない。
これはアヤシイ、アヤシイぞ!
フィギュアも一応発売されたが、造形も彩色も、実物の再現度はイマイチ。
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流用を疑うからには、元ネタの作品があるはずで、カマキリとなると、
1957年の“The Deadly Mantis”という作品が候補にあがる。
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(アメリカ、ユニバーサル作品 日本未公開)
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↓こちらが予告編
↓15分ほどの本編ダイジェスト。
さいわい、カマキリ怪獣の写真は豊富に残されてます。
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基本はカマキリまんまですが、通常のカマキリの頭部の下に、口裂け女みたいな下顎があり、カマにはトゲが本物のカマキリよりも盛大に生えている。
キティックと比較すると、なにせカマキリだから似てなきゃないが、
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完全に別個の造形物だとわかる。
キティックについての情報は、
「スカートを履いてるから女性キャラ」とかの後付け設定はともかく、
撮影時に関しては、
*ジャック・パーヴィス(ジャワやアグノート、イウォークのティーボも演じたミジェット)がスカートの中に身を隠して、上半身を操作した
----以外、ほとんどない。
ところがSWCⅥ(スターウォーズ・セレブレーション6)で、
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(2012年8月23~26日 フロリダで開催)
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Star Wars
カンティーナの分析を披露するパネル(講演会・発表会)があり、
そこでキティックは、スチュアート・フリボーン(メイクアップアーティスト)門下生の、
クリス・タッカー(同名の現役黒人俳優とは、もちろん別人)が造形を担当したという新情報が披露されたそうだ。
当時の同僚のメイクアップアーティストのニック・メイリーによれば、
タッカーは、ウォーラスマン(ポンダ・バーバ)、プルトーニアン(ネイブラン・リーズ)の頭部造形を担当、持ち前の長身を生かして、背の高いトニカ・シスターズ2人のメイクも行った。
その後に『エレファント・マン』(1980)『狼の血族』(1984)等も担当した。
造形物から判断するに、クリス・タッカーは、独自の作風を加味するよりも、実物にきわめて忠実な、「そのまんま造形」に徹するタイプの職人だったといえるだろう。
こうしてカマキリ女はリサイクルではなく、新規造形だということが判明したが、
同じ講演で、他の使い回しの例が披露されたので、次回はその話です。