『累-かさね-』
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2018/9/22 TOHOシネマズ新宿 スクリーン6 D-12
DORO☆OFF展示会の1日目に足を運ぶ前に、
早朝上映を鑑賞。
そうまでして他の作品をさておいて『累-かさね-』を観たのは、
『響 -HIBIKI-』レビューへの常連ベラデンさんのコメント投稿で、
『累-かさね-』がオススメされていたから。
それがなかったら、見逃していたかも知れない。
見終わって、
「こんなすごい映画を、見逃しそうになっていたのか。あぶねえ、あぶねえ」
と冷や汗状態。
みなさんもそうなってしまっては遅いので、
上映回数も各劇場で激減中なことだし、
万難を排して映画館で『累-かさね-』をご覧いただけますよう、
急遽記事をまとめました。
終わり。
でもいいんだけど、
世の中には多様な人物がいるから、
『累-かさね-』を観ても、
①「そんなにいいか?」」とピンと来ない人や、
②「これならDVDでもいいでしょ」という人や、
③「これを褒めるなら、なぜあの作品の評価がキビシイ」
——というご感想を抱かれるかもしれません。
しかし何事にもチャンスとリスクがある。
私もベラデンさんのコメントがなければ『累-かさね-』を見逃していただろうから、
今こうしてこの記事を読んで下さっている、
ありがたい読者の皆さんにも、
同じ損を被(こうむ)って欲しくない。
そこでとにかくまずは映画館で公開中に必見としておき、
事後処理(上述①〜③の疑問への解答)は以下に記すが、
画像も含め、ネタバレもあれば内容にも具体的に触れるので、鑑賞後にお読み下さい。
【鑑賞記】
なにしろ当日のお出かけ主目的は、
11時開場のDORO☆OFF展示会(浅草橋)だったので、
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オープンたちまちの入場ではないにせよ、
開場前の都内シネコンでの上映となると、
早朝の第1回。
かなり早起きして気合いを入れて鑑賞するわけだが、
前夜の睡眠のバランスも取れず、よく眠れなかったため、
鑑賞作品がつまらなければ、
たちまちアクビが頻発、すぐに睡魔に襲われてしまう。
しかし『累-かさね-』に関しては、
まったく眠くならずに、ひたすら作品世界に引きこまれ、
ラストシーンからエンドクレジットに切り替わる時点で、
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映画のあまりの出来の良さに、
思わず「うわっ」と感嘆の声を上げていた。
終映後にトイレを出ると、
ぴあの腕章をつけた、
出口調査の女性に呼び止められる。
対象作品は、
「コーヒーが冷めないうちに」
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だったそうだが、思わずその女性にまで、
『累-かさね-』をオススメしてしまったほど。
何がそんなに良いのかって、
それはもちろん、
主演女優の2人、土屋太鳳 (つちや・たお)と、
芳根京子(よしね・きょうこ)の演技合戦。
これがホントにすごかった。
本作の成功は、ひとえに役をこなす俳優陣の演技力にかかっており、
立派にこなせると見込んで、この2人をキャスティングした人(『キサラギ』2007『守護天使』2009の佐藤祐市監督?)が賭けに勝った。
それにしても、
土屋太鳳と芳根京子に、これほどの演技力があるとは、
よくぞ見抜いたものよと感心する。
土屋太鳳を例に挙げれば、
1本の映画の中で、
見た目(メイクや髪型)は変わらず同じままで、
役者本人の演技だけで、何役も演じ分けなければならない。
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土屋の場合、
①舞台女優のくせに演技のつたない女性、丹沢(たんざわ)ニナ。
②丹沢ニナの、演技ではないふだんの様子。
③淵累(ふち・かさね)がニナと成り代わりながら外見はニナのまま。舞台俳優としての達者な姿。
④ニナになりすました累の、演技中ではないふだんの姿。
⑤累なので演技はうまいはずながら、新舞台「サロメ」の役柄に不案内で、いくぶん演技がつたない様子。
⑥「サロメ」の役柄を完璧にこなした、舞台女優丹沢ニナ(中身は累)の最終完成形・到達点
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——の6タイプに大別されるが、
さらに物語の進行に伴い、細かな演じ分けも必要になってくる。
芳根の場合は出番が少ないため、4タイプほど。
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とにかく、しょっちゅう2人は入れ替わり、
観客はその場その場の土屋太鳳が、
本物のニナなのか、はたまた累のなりすましなのか、
演技だけを頼りに見分けなければならず、
それができないと話がわからず混乱してしまう。
つまり『累-かさね-』という作品内での主演二人は、
誰の、どういう状況なのかをしっかり把握して、
自分の判断で異なるタイプを巧みに演じ分けなければならないんだが、
これがしっかりできている。
だから観客はすんなりとドラマにのめり込み、
話の流れよりも、
なにしろ土屋と芳根の演技の達者さに驚いて画面に釘付け、
目が離せない。
土屋太鳳と言えば、
私が初めて映画で観たのは、
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『釣りキチ三平』(2009)のゆりっぺ/高山ゆり役だそうだが、
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日焼け顔が意外な人物に似ていた。
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まったく記憶になく、
なんといっても、
『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(2010)の
エメラナ姫。
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以後も、この手のお姫様、
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ウルトラマンフェスティバル2017の公式サポーター
優等生的、健全なタイプばかりを演じ、
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『チア☆ダン』
年相応でなく、ぶりっ子すぎると不評を買うことがしょっちゅうの、
土屋太鳳のいったいどこに、
こんな底なしの演技力が秘められていたのか?
そうなると土屋太鳳の、
TBSの「オールスター感謝祭 2016秋」
とか
「王様のブランチ」等で見せていた、
まっすぐでひたむき、周囲を気遣う様子こそ、
実はいいこちゃんぶった演技の一幕だったと、
よくぞ見抜いたものである。
私はNHKの朝ドラはまったく見ないので、
「おひさま」(2011)「花子とアン」(2014)「まれ」(2015)の土屋太鳳も、
「花子とアン」と「べっぴんさん」(2016)の芳根京子も全く知らず、
芳根に関しては『累』でほぼ初見。
CM集を確認しても、全然ピンと来ない。
なにしろ『累』という映画は、
CGによる顔のすり替えや、
セット等は脇役、添え物に過ぎず、
土屋と芳根の演技力がつたなければ成立せずに大失敗。
観客に即座に見抜かれ、
たちまち作品の価値が揺らいでしまう。
つまり、主演女優に演技力がなければ、
いくらCGや撮影や音楽でごまかそうが、
『累』という作品は成功しないが、
成功するかどうかは、女優本人の役柄への理解と、
自在に演じきり、役になりきる演技力に賭けるしかなく、
できるかどうかの保証はまったくない。
このたび、土屋太鳳と芳根京子の演技力は、
あくまでも役者本人の判断と裁量で、
現場で演技指導があったかどうかはアヤシイと受け止めた。
というのも、
土屋太鳳
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芳根京子
というW主演の二人はもちろん、
檀れい
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浅野忠信
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等々の演技達者がしっかりと脇を固める中で、
演出家の烏合 零太(うごう・れいた)役の…
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おっと、うっかり名前を書くと、
『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿のように、
名前を口にするのもはばかられる、
某有名事務所に所属。
『エイトレンジャー』(2012)でも共演した、
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同じグループ内には鳥貴族の御曹司で、
以前に芹那とつきあい、最近は吉高由里子と良い仲らしい、
男前もいる。
とにかく、エドワード・スノーデン氏と風貌が重なる、
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烏合役の「その人」は、
冗談かと思われるくらいに演技がドヘタ!
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「不機嫌な様子」「いらだちを隠せない様子」などの表現が上っ面の表層的で、
深みもなく薄っぺらい演技をかまし続け、
そこだけ別の映画のように浮いている。
烏合の役柄は、役者の演技の善し悪しを瞬時に見抜き、
ズバリとそれを指摘する名舞台演出家…のはずなのに、
よりによって、その本人の演技がてんでなっちゃいないんじゃ、
名演出家という役に説得力がないじゃないか。
だがしかし、
こんなダメ役者に、どう演技指導すればいいのか、途方に暮れる。
たとえば
「怒っている役だから怒ってる演技をするんじゃなくて、
表向きはつとめて平静を装いながら、うちに込めた感情が時折かいまみえる」
演技を、佐藤祐市監督が指示したところで、
この人にできるとは思えないし、
それができるなら、指導なんかしなくたって、
はじめから自分でそう演じていただろう。
ここからの状況判断で、
土屋太鳳にも、芳根京子にも、
おそらく監督からの演技指導はなく、自由に演じていたんだろうと推測される。
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そしてまた、土屋がこの役に起用されたのは、
過去作品の演技の実例が判断材料ではなく、
マラソンで女子1位になりながらゴールで倒れ込み、
それでもマイクを向けられると番宣につとめるという、
驚きの使命感と責任感から、
彼女に任せれば、必ず使命を果たすと見込まれたのかも知れない。
そしてまた、
男性アイドルタレントの場違いな起用も実はねらいどおりで、
もしもこれを主演でやったら映画はぶちこわしだよねという、
昨今のアイドル映画への皮肉な当てこすりなのかも知れない。
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※あくまでも私個人の感想です。
そういえば、ほぼ同時期公開の『響 -HIBIKI-』と
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『累-かさね-』は、
- タイトルが漢字一文字に読みがなが続く。
- 主演がアイドルか、アイドル的な地位の若手女優
- マンガが原作
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しかしどうしても、映画館でどちらか1本しか観られないとしたら、
私は迷わず、『累-かさね-』の方を選ぶだろう。
劇場で没入し、イッキ見することにこそ意味があり、
家庭でCMに中断されたり、
雑事に妨害されては、せっかくの名演も台無しだからだ。
『スリー・ビルボード』や
『万引き家族』と同様に、
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『累-かさね-』も、「え、そこで終わるの?」な場面でエンドクレジット。
理解できずに面食らってる人も多い。
ストーリーやドラマが中途半端で尻切れトンボなのに、
あえて映画がそこで終わる場合、
その映画が観客に伝えたいことはすでに完了しているから、
というのが理由だったりする。
つまり『累-かさね-』の場合、
ドラマの筋立ては途中から二の次になり、
主役(表向きは丹沢ニナ、中身は淵累=ふち・かさね)の演技の完成こそが見せ所という、
主従関係の逆転現象が起きている。
というわけで、
①「そんなにいいか?」」とピンと来ない人
②「これならDVDでもいいでしょ」という人
に対する解答は示したので、
③「これを褒めるなら、なぜあの作品の評価がキビシイ」
について。
ひとえに、
「作品ごとに評価基準が異なる」
「その作品で最も良い部分を認める」
と言うに尽きるが、
たとえば『累-かさね-』のレビューで、
演技には文句はないが、
五ヶ月も昏睡状態だった人間が、
すんなりと日常生活に戻れるわけがない
——というのがあった。
本人は「さすがスルドイ」という称賛を期待したのかも知れないが、
どっこい私は、うなずく気にならない。
そもそも映画『累-かさね-』を敬遠していたのは、
予告編でキスで顔が入れ替わるのを見て、
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そんなの現実には絶対にありえないから、
「ウソくさくてくだらなさそう」と考えたからだった。
鑑賞当初は、たしかに「?」な部分もあったが、
ドラマが進むにつれてきちんと説明がついて「なるほど」
何より土屋太鳳と芳根京子の名演に魅了され、
多少の話のつじつまの合わなさぐらいで、
せっかくの名演にケチをつけたくなくなった。
つまり途中からプロットの欠陥や矛盾なんかは、もはやどうでもよくなったわけで、
延々と眠る病(ターリー病?)という、
『そのときは彼によろしく』(2007)以来のゴミ設定にも、
いちいち文句をつけるつもりはなくなった。
そこがそのままでも改善されたにしても、
作品の核でありキモである、
主役の演技の質はいささかも変わらないからだ。
このように、観客を味方につけ、
応援したい気持ちにさせるのが、
何よりすごいことではないか。
どなた様も、必ずお出かけ下さい。