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『2重螺旋の恋人』はコヴェナントよりもエイリアン?【臨時】

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【臨時更新】

 

明日(2018/8/4)一般公開!

 

『2重螺旋の恋人』は、第70回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを競うメインコンペティションに選出され、2017年5月26日にカンヌでプレミア上映された。

日本では2018年6月に開催されたフランス映画祭2018にて上映されたのち、2018年8月4日にR18+指定作品として全国公開される。

 

2重螺旋の恋人 L'Amant double

2018/6/5 試写にて


当日は10時から、

銀座で『パンク侍、斬られて候』の試写、

 

午後3時半から、

六本木で『最後のランナー

 

そしてまた六本木で、

『2重螺旋の恋人』と、1日で3本も試写を観た。

 

2本続けて「はずれ」だったため、

昨今の映画は、のきなみこんなレベルなのか、

自分の映画の価値基準がずれてしまったのか

と相当に悩んだ。

 

もしも3本目もハズレだったら…。

 

もうそういう映画の時代になったんだから、

いさぎよくあきらめて、

駄作と感じた映画は褒めて、

名作と感じた映画はけなすことに方針転換しようかな。

と、そこまで追いつめられた。

 

だがしかし、

3本目はまぎれもなく、

お世辞抜きに完全に、

私が良いと感じる、これぞ映画!だった。

 

作品との貴重な出会いを大切に、

ここでは『2重螺旋の恋人』がどういう内容かは触れないでおきます。

 

2017年のフランス・ベルギーのエロティック・スリラー・ドラマ映画。

監督・脚本はフランソワ・オゾンで、ジョイス・キャロル・オーツの短編小説が翻案されている。

 

 

とにかく『2重螺旋の恋人』は、

もう、冒頭から映像の切れが違う。

女性のアップで、長めの髪にいきなりざっくりとハサミが入る。

 

そこからずっと、ひたすら画面を凝視し続け、

どっぷりと作品世界にのめりこんで、

一気に最後まで見通した。

 

 

ところどころ、おかしなところはあるんだが、

どうやらそういう矛盾を意図的に盛り込んで観客を翻弄、撹乱しているらしく、

ジュラシック・ワールド/炎の王国』のように、

作劇の矛盾が作品の落ち度になったりはしない。

 

【以下・ネタバレ具体例/赤字表記】

 

主人公のクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は、

自分と同じく、男性加害者(ジェレミー・レニエ)の被害に遭った女性を探り、

サンドラという女性にたどり着く。

 

本人とはあえず、サンドラの母(あっとびっくり、おなつかしやのフランス人女優!)の証言を聞くが、

サンドラの年齢設定は、中年の加害者男性と同年齢なのか、

若い主人公クロエとなのか判然としない。

 

さらにクロエの母役がサンドラの母役と同じ人なため、ますます混乱する。

だがこのキャスティングから見ても、

わざと混乱させてるんだろう。

 

なにしろクロエは心理的な揺さぶりを受け続け、

なにが真実で、なにが自分の妄想かわからなくなっているからだ。

 

 

【ネタバレ終わり】

 

いやあ、ほんと、全編まんじりともせずに見入りましたよ。

 

まったく眠くならず、

まるで展開が予測できず、

ちっともタイクツしない面白さ。

 

一応、短編小説がベースでも、

完全なオリジナル作品として脱帽するが、

それでもアイディアの根底には、

『エイリアン』(1979)が参考にされているのに気がついた。

 

お腹の場面だけでなく、

ショートカットのヒロイン、

下着姿、

随所に挿入されるネコの姿等々。

 

作り手もそれを隠さずほのめかしていて、

途中で、明らかにジェリー・ゴールドスミスの『エイリアン』の動機(モティーフ)がかすかに流れる。

 

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エイリアンの基本精神は、

本家続編/前史の『プロメテウス』(2012)とか、

34

つめ

haahaa

エイリアン:コヴェナント』(2017)よりも、

よほど『2重螺旋の恋人』に受け継がれているのかも知れない。

 

私は映画作家の独創性を信じているので、

なんでもかんでも元ネタ探しやこじつけは避ける方だが、

『2重螺旋の恋人』に関しては、『エイリアン』を引き合いに出しても、

両作を貶(おとし)めることにはならないと信じるので、

あえて書いておくことにした。

 

監督・脚本のフランソワ・オゾン作品は、

これが初めてだが、

たいへんな才能のある名監督だと感じた。

 

過激な性表現から年齢制限があるが、

鑑賞可能な方は、同時期に公開中の何を差し置いても、

『2重螺旋の恋人』をご覧になることをオススメします。

 

上映館は、

ヒューマントラストシネマ系。

 

 


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