やっと観ましたよ!
『エイリアン:コヴェナント』(2017)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
イオンシネマ越谷レイクタウン 2017/9/28 スクリーン4 E列 6席
結論から言えば、
これは見逃すわけにはいかない作品でした。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
これじゃあ、『エイリアン』(1979)とつながらないじゃん!
が払拭されたからである。
『コヴェナント』を観る限り、
当初から『プロメテウス』が前編、
『コヴェナント』が後編の二部作構想だった
ようなおさまりの良さで、
今度こそ『エイリアン』とつながった一方、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
リドリー・スコットが監督していない、
『エイリアン2』(1986)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
『エイリアン3』(1992)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
『エイリアン4』(1997)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
は「なかったこと」にされ、整合性が取れなくなっている。
『プロメテウス』『コヴェナント』の2本が前後編二部作だとすると、
主人公は、巨大企業ウェイランド湯谷(ゆたに)の製造したアンドロイドの第1号にして最高傑作、デヴィッドだと明確になる。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
造物主=クリエイター=神
と、
被造物=創られし者=人間
という普遍(不変)の関係を覆すことができるのは、
被造物だったはずの人間が造物主となり、人造人間=アンドロイドが創られた時だと、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
完成当初から気づいていたデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
ダビデ像を出してごまかしてるが、シリーズのプロデューサー、ブランディワイン社のデヴィッド・ガイラーからの命名。
なんで断定できるかと言えば、
デヴィッドから創造性を取り除いた次世代モデルの名前がウォルター。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
デヴィッド・ガイラーと共に、
ブランディワイン社のプロデューサーに名を連ね続ける、
ウォルター・ヒルに由来する。
デヴィッドに話を戻すと、創造的行為や創作活動にひときわ興味関心を抱く一方、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
↑ピアノを弾くのには曲の選択から実際の演奏まで意欲満々。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
↑『プロメテウス』では、冒頭に『アラビアのロレンス』(1962)を鑑賞し、
↓イケメンの風貌が共通するピーター・オトゥールの髪型をまねていたデヴィッド。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
↑今にして思えば、芸術を理解し、たしなむことこそクリエーターの資質(クリエイティビティ)と考えていたフシも見受けられる。
お茶を入れるなどの従属的、隷属的な単純労働には不満タラタラ。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
ピアノ演奏のノリノリの姿勢から一転、ご主人様の注文に、無言、返答なしで従っている。
永遠に生きられる特性のおかげで、
自らがクリエイターになれるチャンスが訪れると、
他の事はどうでもよくなり、
ひたすらその目的達成に向かって突き進む。
そこには、他者との共存という選択肢はなくなり、
むしろ目的実現を阻む障害として、
他者は排除の対象に変わってしまう。
こうして神よりも悪魔に近づいたデビッドの完全目的達成まであとわずか、
というのが『プロメテウス』『コヴェナント』前後編二部作のストーリー骨子なので、
その線に沿う限りは、とてもよくできた作品で面白かったが、
それ以外の要素は添え物に過ぎず、
相当にいいかげんなので、
1作目『エイリアン』を絶対視するむきには、
「○○なはずじゃなかったのか?」
と、リドリー・スコット監督への信頼が揺らいでいるようだ。
↓1作目のチェストバスターに、折り曲げた小さな前肢があるのに気づかず、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
↓2作目で激しく動かしているのさえ、違和感を覚えたんだから、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
『コヴェナント』のチェストバスターが、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
小さなゼノモーフ(ジノモーフ=以前はビッグチャップと呼ばれていた)に変わってしまったことには、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
さすがに「はぁ?」と思ったが、
実はリドリー・スコットにとっては、
そこはどうでもいいところだったりするんだなと感じた。
傑作が生まれ、
名作としてその座が揺るがなくなると、
全てが成功だったとされてしまい、
監督に手柄を独り占めされがちだが、
映画は共同作業だし、
偶然の要素も多々あるわけで、
絶対視や神格化は禁物である。
1作目『エイリアン』には、脚本のダン・オバノンの資質が最も色濃く現れている。
オバノンは南カリフォルニア大学の映画学科に在籍中の1971年に、ジョン・カーペンターと短編作品『ダーク・スター』を共同制作。
この作品の長編リメイク化により、1976年度サターン賞最優秀特殊効果賞を受賞。
当初は監督志望だったが、その前に編集を覚えろ、脚本を書けと指導され、最初に目が出たのが『エイリアン』の脚本で、リドリー・スコットの監督手腕に感服。自分は脚本家に専念することになった。
オバノンにしてみれば、
『エイリアン』の脚本は『ダーク・スター』の雪辱戦のつもりだったらしく、
「登場人物の裏設定なんかどうでもよかった」
と、ひたすらサスペンスホラーとしての作風や、
エイリアンの奇抜な造形にこだわり抜いた。
『エイリアン』公開時は自作への自信が持てずに自宅に引きこもっていたのを呼び出され、
行列や拍手喝采の状況を見て、涙が止まらなかったそうである。
オバノンの流した涙はしかし、
原作者のスティーブン・キングが、『スタンド・バイ・ミー』(1986)の試写を観ている間泣き通しだったり、
野坂昭如が『火垂るの墓』(1988)の試写を観たその晩、
泣きはらして寝付けなかった、
(どちらも覚え書きで出典をたどれず、記憶違いかも知れない)
と言う時の涙とは性格が異なり、
情感を一切廃して、
非情に徹した美学の追究という点では、
デヴィッドのやり口と通じるところがある。
『コヴェナント』を踏まえると、
79年当時の字幕では単に「会社」とされていた1作目の時点ですでに、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
画面表示は、厳密には“WEYLAN YUTANI”
ウェイランド湯谷社は、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
◎宇宙のどこかに、究極の生物兵器があることをあらかじめ知っていて、
◎発見したら、必ず地球に持ち帰ることが絶対で、
◎人間ではそれをやり通せない場合に備え、アンドロイドをクルーの一人になりすまして紛れ込ませていた
Image may be NSFW.
Clik here to view.
——等々は偶然ではなく、当初の計画通りだったことになる。
だがしかし、2009年に亡くなったオバノンが、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
もしも『プロメテウス』と『コヴェナント』を観て、
感涙にむせんだかは、かなりあやしく、
流したとすれば、嘆きの涙だったのではあるまいか。
逆に言うと、
両作共に、オバノンの存命中には世に出るはずがなかった。
タイトルの「コヴェナント」は、プロメテウス(本当の英語読みカナ表記は「プロメシアス」)と同様、
宇宙船の名前、
つまりプロメテウス号、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
Image may be NSFW.
Clik here to view.
コヴェナント号
Image may be NSFW.
Clik here to view.
Image may be NSFW.
Clik here to view.
だったわけだが、
とにかく「コヴェナント」とカナ表記のタイトルが発表された時、
「どれだけの日本人が、この単語を知ってんねん」
と、
『マレフィセント』(2014)以来の驚きだった。
コヴェナントといえば、
アーク・オブ・ザ・コヴェナント
(Ark of the Covenant)以外では、
およそ耳にしない単語。
『十戒』(1956)で、モーセ(チャールトン・へストン)がエジプトの暴君ラメセス(ユル・ブリンナー)から同胞のヘブライ人を解放。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
シナイ山で神から十戒の刻まれた石板を授かる。
Image may be NSFW.
Clik here to view.
下山すると民衆は享楽に酔いしれ、
モーセは怒りに任せて石板を割ってしまう。
この残骸を収めた箱が、契約の櫃、「アーク・オブ・ザ・コヴェナント」で、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)で、
インディ・ジョーンズがナチスドイツと争奪戦を展開する。
『コヴェナント』では、
「我が名はオジマンディアス 王の中の王
全能の神よ、わが業績を見よ そして絶望せよ」
——という、パーシー・シェリーの詩をデヴィッドが、
自分になぞらえて引用。
これをバイロンの詩と勘違いしていることをウォルターに指摘させ、
デヴィッドが完全無欠な存在でないことが示される。
オジマンディアス(Ozymandias)とは、
古代エジプト王ラムセス2世、
Image may be NSFW.
Clik here to view.
つまり『十戒』でユル・ブリンナーが演じた絶対君主の別名なので、
独裁者から救われた人たちの運命の先に待ち受ける、
神との契約の証が名前に冠されているコヴェナント号は象徴的で、皮肉でもある。
『エイリアン:コヴェナント』の仮題は『パラダイス・ロスト』
ミルトンの「失楽園」のことだが、
大学時代に、この詩を1年かけて読み進める授業を、
2年連続で取ったものの、単位を稼ぐために取った授業なだけで、
自分には「失楽園」に何の興味もないため、
当時もつまらなかったし、ただの一節も覚えておらず、
まさに猫に小判状態だった。
そんなこんなで、
『エイリアン:コヴェナント』は、
色々な教養や基礎知識があればそれに越したことはないが、
別にそれが身についていなくても理解不能な作品じゃないから、
わざわざ予習するまでもないと思いましたとさ。
売り上げランキング: 29,198
売り上げランキング: 3,762
売り上げランキング: 3,195
売り上げランキング: 25,772
売り上げランキング: 2,491
売り上げランキング: 33,978