これの続き。
関連して、ドリカンさんから、以下のようなコメントをいただいたので、ここに転載。
ノンマルトの制作秘話で、金城氏が飯島敏宏監督と居酒屋で呑んでいた時にふと、飯島監督が「我々人類は初めからこの地上に住んでいたのかな?もしかしたら地上に住んでいた先住民を追いやったんじゃないのかな?」と酔いしれながら語り出したのがキッカケだったと聞いています。
つまり金城氏自らがこのアイディアを先に思いついた訳ではなく、飯島監督のつぶやきからヒントを得て、この「ノンマルト」が誕生した訳です。
なのでそこに巷で言われてる「故郷、沖縄の悲劇の暗喩」というネガティブな解釈は的外れもいいとこですね。故・金城氏もハッキリ言って「ノンマルト」が勝手にこんな偏狭な政治的解釈にされてる事は心外に感じている事でしょうね。
金城氏本人はこの話を純粋なSFとしてノリノリで書いていたでしょうに。
(以下略)
ドリカンさんは続けて、
なんでもかんでもその人の出自だとかバックグラウンドと結びつける発想は貧困で、その人に対して失礼
だという主旨を書かれ、私も全く同感です。
どうも評論家や受け手の中には、自分の発想力の貧困さを棚上げして、作品は何か元ネタがないと作れっこないと勝手に決めつけ、そういう関連づけのみに気を配ってしまう人がいるみたいだけど、
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でもって、そんな視点と能力しか持ち合わせていない人が、
受け手(お客)の立場にとどまる限りは自分が納得できればそれでもいいけど、
その方向の視点だけで評論したり番組を作ったり、
よしんば、作り手なんかに回っちゃ、絶対にイカンと思うぞ。
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創作とは創造であり、無から有を創り出す作業なのに、マネやアレンジばっかりじゃねえ。
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加えて、「まだ現実社会に存在しない問題をあつかうなんて、非現実的で意味がない」という考え方があるとしたら、(※あるかどうかはわかりませんが)それも偏狭な思考だと思える。
未来に生じる問題を考えなきゃ、社会は進歩しないよ。
----と、またしてもイヤミったらしい前段が長くなりましたが、
今日の本題は、
創作の才能にあふれた天才、金城哲夫が、
なぜ晩年は奮わなかったのかについて。
端的に言えば、沖縄という枷(かせ)から抜け出せなかったからだと思う。
沖縄生まれ、沖縄育ちの金城氏が、東京に出てくることになったきっかけは、
地元の高校(那覇高校)の受験に失敗したことだった。
上京して玉川学園高等部に入学した金城氏は、玉川大学文学部教育学科を卒業。
しかし沖縄の高校受験に失敗したからといって、東京の私立に誰しもが通えるわけではない。
金城の実家は松風苑(しょうふうえん)という料亭で、
つまり彼は、金持ちのボンボンだった。
玉川在学中に、恩師である上原輝男の影響を受け、脚本に興味を持ち始める。
上原より教え子の一人だった円谷皐(つぶらや のぼる)を介して円谷英二を紹介され、東宝特撮映画で健筆を振るっていた関沢新一から脚本家としての指導を受ける。
1963年に円谷プロダクションへ入社。
本人の好むと好まざるとにかかわらず、沖縄という土地と、当時その土地が抱える状況から解き放たれた金城氏は、東京ならではの人の縁にも恵まれ、その才能をいかんなく発揮し、彼なしにはウルトラシリーズの成功はありえなかった。
その才能は枯渇することなく、
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「怪奇大作戦」
さっきまでフジテレビ、「土曜プレミアム・ガリレオからの挑戦状~実験す」(6/15 21:00~ 23:10)を見てて気がついたけど、発想の原点は「怪奇大作戦」と同じだね。
※パクッたとかではないけど。
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と、自作の二番煎じや焼き直しですらない(=同じ話をくり返さない)新作を、変わらず生み出し続けたものの、
創作的観点とはまるで無関係の営業のしわ寄せで、円谷プロは文芸部を廃し、発言力を失った金城氏は、1969年に円谷プロダクションを退社し、沖縄県に帰郷。
こうしていったんは解放されたはずの沖縄という土地と事情に、再びからみとられることになってしまった金城氏は、東京では功を奏したSF的発想力を、故郷では発揮する機会に恵まれないまま、
1976年2月23日、泥酔した状態で自宅2階の仕事場へ直接入ろうとして足を滑らせ転落。
(出先から帰宅した際に仕事場の玄関扉が施錠されていたが、母屋に鍵を取りに戻るのが面倒で、たまたま開いていた窓から入ろうとして転落したものと推定されている)
直ちに病院に搬送されたものの、治療の甲斐なく、3日後の2月26日に脳挫傷のため37歳で死去した。
私が「「歴史秘話ヒストリア」(ウルトラマンと沖縄~脚本家・金城哲夫の見果てぬ夢~)を頭ごなしに否定できないのは、
この沖縄に戻ってからの金城氏の軌跡には首をかしげるところがなく、よく調査されていると感じたからだ。
2009年11月。今は資料館になっている、かつての金城氏の書斎を訪れた、ひし美ゆり子氏と古谷敏氏。ひし見氏のブログから無断転載。
いずれにせよ、これ以来、ウルトラシリーズと円谷プロには、金城哲夫に匹敵するクリエイターが参加することがないまま、今年(2013)同プロは創立50周年を迎え、
7月からは、新ウルトラマン「ウルトラマンギンガ」が活躍することになる。
「ウルトラマンギンガ」ストーリー
はるかな昔、宇宙の彼方で―
闇の巨大な力により、すべてのウルトラ戦士と怪獣たちとが小さな人形に変えられてしまった。
宇宙に散らばった人形たちのいくつかは、地球へも流星となって降りそそいでいた…
時は流れ、現代。選ばれた運命の少年・礼堂ヒカルは、不思議な「ギンガスパーク」を手に入れる。
それこそが小さな人形となった怪獣やウルトラ戦士たちを再び巨大な姿へと戻すことの出来る神秘のアイテムだったのだ。
時を同じくしてあらわれる凶悪な怪獣や宇宙人!巨大な闇の力が動き始めていた。
大切な人々を守るため、ヒカルはギンガスパークの力で怪獣やウルトラ戦士の人形と「ウルトライブ」=一体化して立ち向かう。
そして登場するまったく新しいウルトラマン…
その名は「ウルトラマンギンガ」!いま新たなウルトラ伝説が幕を開ける…
楽しみですね。
…って、んなわけねえだろっ!
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