連番としては、
これ(帝国スカウト・ウォーカー商品カタログ/まつわるエトセトラ〈その3〉)
の続きだが、
それは“寄り道”気味だったので、
実質的には、
この記事(スカウト・ウォーカーにまつわるエトセトラ〈その2〉)の続き。
——ではあるんだが、
前回の商品カタログの話に戻すと、
マイクロコレクションの紹介動画に、
より適切なヤツが見つかった。
そこで差し替えたのを報告するのに併せて、
短命に終わりながら、今も人気が高いこのシリーズをまとめた本が出版されたので、
この場を借りて、紹介しておこう。
※アマゾンでの取り扱いはありません。
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さて、
『帝国』のスカウト・ウォーカーがチラ見出演だったのは、
デザインがパクリだった後ろめたさからでなく、
単に技術的な問題だった、
——というところまでは話したが、
そもそもウォーカー(歩行兵器)に関しては、
四脚型のAT-ATからして、
デザインはパクリが前提で、企画が進んでいた。
というのも、当初は帝国軍の地上兵器=タンクは、
ありきたりのキャタピラ式にして、
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ロケ地ノルウェーの陸軍車両を借り受け、
帝国軍チックに飾り立てるつもりが、
その案は立ち消えに。
キャタピラ式には、すでに1作目のサンドクローラーがあったのも、
取りやめになった理由の一つでは?
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↑5連タイヤ式のデザイン案は、
87年以降にゲーム会社WEG(ウエストエンド・ゲームズ)に、
「ジャガーノート」と命名され、
『エピソード3 シスの復讐』(2005)で、
クローン・ターボ・タンクとして、25年後にようやく映画に登場。
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どうにか大型獣を模した歩行式に落ち着いた頃には、
歩行機構を模索する時間の余裕はなかった。
というのも、メカの歩行をどう実現するかは、
※当時、CGと言う手段はありませんでした。
●ストップモーション(コマ撮りアニメ)
↓左は、AT-ATの設計と量産も担当したジョン・バーグ。右はコマ撮りアニメの名人、フィル・ティペット。
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——以外に、
●実際に歩行するロボットの開発
も検討されていたので、
いずれにせよ、
ホントに機能するメカニズム(作動機構)が要求された。
となれば、ゼロから歩行機構を考案するゆとりはとてもないので、
既存の歩行メカの、“まともで由緒正しい”デザインを借りるしかなく、
脚部は、シド・ミードのデザインを、まんま拝借。
↓『USスティール社 実現するかも知れないメカファイル』(US Steel - Portfolio of Possibilities 1969)より。
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↑足と脚、関節の比率も、卑屈なまでにミードのメカに忠実な側面デザイン図。
ボディは、『宇宙戦争』の表紙イラストが発想の原点だった。
恐らくはバッタを模したと思われる、
バージル・バーネット(Virgil Burnett)画の、1962年版『宇宙戦争』の表紙
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↑これを指摘したのは、私以上にSWのパクリネタ追及に執念を燃やす、デンマーク出身で現ニューヨーク在住の、マイクル・ハイルマン(Michael Heilemann)
どんな形でもかまわない宇宙船をデザインする時は、
デザイナーの意地もあり、
絶対盗作しなかったジョー・ジョンストンなのに、
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↑ミレニアム・ファルコンは、完全なジョンストンのオリジナル。
ことウォーカーに関しては、
パクって当然と考えてしまった原因は、ここにある。
じきにジョンストンは、
ILMのデニス・ミューレンから、1枚のイラストを手渡される。
リー・サイラ-が、ガーシアン・ストライダーというメカの1機種として、
1976年に描き、1977年以降のSFコンベンションで販売していたもの。
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ジョンストンはこれに大いに触発され、
↓AT-AT(右)の脚部を、浮き彫り調のミード型から、平べったい薄板状に変更。
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のみならず、↑鳥脚逆関節二脚型ウォーカー(左)を、
(四脚型は無数にスケッチを描いて最終形に行き着いたのに)
わずか3枚で完成形に達していた。
偵察用二脚型ウォーカーの構想は、ジョンストンがサイラーのデザインを目にする前からあった。
↓ただし最初期版では後姿しか描かれず、脚はレリーフ状(浮き彫り調)のミード型で、人のように直立していた。しゃがむ場合は、遠景にあるように右脚は前に、左脚は後に折って、四股を踏んでしゃがむようになっていた。
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↑これが第2案では、脚が薄板状でトリのような逆関節になり、サイラーの影響は誰の目にも明らか。というより、どこが違うねん?
単座(一人乗り)とされている。
『レベルズ/反乱者たち』のメカ、
AT-DP (All Terrain Defense Pod) として、
2014年についに製品化!
サイラー画が元ネタの2点目のデザインには、
↓「最終スケッチ」とあるため、これが最終稿だと勘違いしてる人が多い。サイラ-画の鏡像(左右反転像)で、頭と足(靴)だけがジョンストン作。
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↑「二脚型スカウト・ウォーカーのモデル製作のための最終スケッチ=決定稿」
ようやく、ジョンストン独自の立ちポーズが確立。
と、ここまででデザイン盗用は明白だが、
2013年にルーカスフィルムがディズニーに買収されて、
ジョー・ジョンストンが復権。
「ジョー・ジョンストン・スケッチブック」というサイトで、
SW関連アートを売り出しているが、
そこで描き起こされたスカウト・ウォーカーが、
のきなみブサイク!
↓アインシュタイン稲田のように、しゃくれてるし、メタリックレッドのボディにオレンジやライムグリーンの差し色の、ド派手なカラリング。
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カ…カッコ悪い!
完全に、キャラが変わっとるやないか~い!
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しょせんはジョンストン自身から出て来たデザインラインじゃなかった
というのもあるし、
これこそ盗作の動かぬ証拠とも受け取れる一方、
今さらながらに、スカウト・ウォーカーから、
サイラー臭を消し去る作業とも勘ぐることは可能。
だけど、このデザインとカラリングだったら、
果たして往事の人気が出ただろうか。
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オレが子供だったら、「何これ?」ってドン引きしてたよ。
なにしろ、こんな
↓「アイーン」で、チンパン顔のスカウト・ウォーカーを、
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一度でも描いてしまった時点で、
オレの心の中の師、ジョンストンは、死んでしまったんだよ。
“師の死”(しのし)って、シャレかよ!
スカウト・ウォーカーにまつわるエトセトラ〈その5〉
に続く。