恒例の「2199」感想第5弾。
その前に、いくつかいただいたご意見の中で、気になった共通要素があったので。
こちらが指摘した、作品の感心できない点について、
「それを裏打ちする描写が前後にあるのに、見落としたそっちの方が至らないのでは」
という類の指摘がけっこう多い。
↑双眼鏡については、「2話から出てますよ」って擁護がけっこう多かった。
だから何?
前フリしときゃ、一般視聴者が当然違和感を抱く描写を、自分の趣味だからってゴリ押ししていいことにはならない。
反対に、言い訳要素なんか入れるヒマがあるなら、もっと本筋語りに集中して欲しいよ。
ちなみに、
艦橋越しに双眼鏡をのぞく行為に否定的だった第二次大戦の軍人(小澤治三郎中将)の話は、今発売中の雑誌『丸』(2013年 5月号)の連載にありますよ、
----と、さかえさんから教えていただきました。
曰く、
「それについては、何話で(ここの場面で)ふれてますよ」
ってやつ。
3話で「シュルツの娘を萌えキャラで出すのはあざとい」と書いたら、「冷遇された下級市民の悲哀を表すためでは?」との擁護の声があがった。
彼が下級市民だというのは、4話以降のゲールのセリフで明らかにされる後出し。
オリジナルの4話分の内容を2話に凝縮する際、萌えキャラなんて余計な要素を入れるより前に、もっとやるべきことがあったのでは?
どうやらこの考え方は、2ちゃんで相手を貶(おとし)めるのに横行しているテクらしく、
振り返ると、「ブラック・スワン」の時にも、似たようなことがあった。
曰く、
「作品を見もしないで、批判なんかどうしてできる」
と。
「ブラック・スワン」の場面の随所に、今敏(こん・さとし)監督の『PERFECT BLUE(パーフェクト・ブルー)』(1997)からの引用がある。
これを指摘するためだけに、わざわざそのタイトルを見てみる必要はない。
全く判断材料がなかったら、もちろん批判は不可能だが、同じ作者の作品を何本か見れば、おおよそのデキは見当がつく。
と言う話をしているところに、「見てないのかよ」と来られると、どこを読んで、こういう文句を言ってくるのかと、読解力の無さにあきれてしまう。
こちらのブログをきちんと読み取っていただければ、およそ出てくるはずのないカキコミには、対処のしようがない。
もっとも、そういう相手への攻撃の仕方が、あたりまえに横行しているからこそ、それに疑問すら抱かず、平気でやってしまうんだろうけど、せめて「どうやらここは、そういう理屈が支配してない場所らしい」というニオイぐらいは嗅ぎ取れないものなのか?
我々は誰もが皆、
世間で横行しているから、あたりまえにやるのではなく、まずはその固定観念自体が、果たして正しいのかから、疑ってかかる必要がある時代に生きている。
そして最終的には、正しいか、間違っているかの判断基準は、自分の中に培(つちか)って、それを拠り所(基準器)に照らし合わせるしかなく、その基準器の精度を上げるには、判断者自身が世俗に流されず、正しい生き方をするしかない。
私の小説はどれも、常識を疑ってかかり、正しく生きることについての物語です。
↓とはいえ、まだ1冊も売れてませんが…
トイレベンチャー
↓こっちの2冊は、おかげさまでボチボチ売れてます。
ルインズウォー(遺跡戦争)
スクール リボーン(学校再生)
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では、本題の「2199」第5話「死角なき罠」について。
これまで同様、各エピソードの構成は、
*元になるオリジナル版のエピソードにあった、矛盾や説明不足を洗い出し、それを補完する。
今回、反射衛星砲は、軌道上に散在する岩塊(デブリ)を、高エネルギーを照射して励起化する、遊星爆弾製造装置が本来の用途と再定義された。
ただし爆弾化した岩塊を、どうやって地球に誘導しているのか(ガイダンスシステムの実態)は未だに不明。
このリフレクター(反射板)システムを、主砲射程の死角に位置するヤマト攻撃に転用。
新たに設定された、ヤマト界初の自衛シールド、波動防壁のおかげで、初弾は着弾たちまちの誘爆はない。
だがその防壁の威力は続かず、着弾のたびに被害が甚大。
どうなるヤマト?
という本筋は、きちんと伝わったと思う。
*各場面の描写は、似たような状況設定の過去作品から、それが「ヤマト」かどうかにかかわらず、積極的に借景する。
↓ヤマトは艦底を氷の地表にこすりつけながら、冥王星に着地。----「2199」第5話
↑ヤマトは氷の地表を砕きながら、アクエリアスの地表から旅立っていく。----「復活篇」
↓度重なる反射衛星砲の直撃に耐えられず、ヤマトは艦首を天に向けながら、海に沈んでいく。----「2199」第5話
↑艦首を天に向けながら、アクエリアスの海に沈んでいくヤマト。----「完結編」
今回、波動砲が封印されたのは、
*なんでもかんでも、この必殺武器で解決というのは安直なため。
*古代進が主役というだけで、波動砲も撃てば、戦闘機隊の隊長もと、手当たり次第に活躍する事への理由付け
だが、それは手際よくできたと思う一方で、
出撃の音楽に、ワンダバのコーラスをかぶせる感覚がわからない。
「ヤマト」はそもそも、それまで実写特撮しか追求しなかった、大人の本格ドラマをアニメに導入した先駆者だった。
なので初期のライバルは円谷プロ、初放送時の裏番組が(円谷プロの)『猿の軍団』だったのに、なんでよりによって、そっちの要素を取り入れるのか。
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『ヱヴァ』が庵野監督の原点になった、1971年や「帰ってきたウルトラマン」にオマージュを捧げるのとは、わけが違う。
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原作者の故プロデューサーの意向に沿わないことだけは確実だから、
これもまた、ヤマト味よりも自分味が優先してしまう、総監督の悪いクセ。
で、総監督が、今後ヤマトをどの方向に持って行きたいのかの、一つのヒントになるのが、今回出て来た、ヤレトラーとか言う、ゴーランドもどき。
ゴーランドは、「さらば」「ヤマトⅡ」登場の白色彗星帝国の将軍。
(左)映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」のゴーランド。(右)TV「宇宙戦艦ヤマト2」のゴーランド。
結局、「2199」は、出来の良かったテレビ第1作に、今後リメイクするつもりのない、(のきなみ出来の悪かった)テレビ「ヤマトⅡ」以降のキャラを総出演させたオールスターキャスト仕立てにして、「2199」完結後に作る続編は、過去作とは訣別した、完全オリジナルストーリーにするのだろう。
あるいはいさぎよく、リメイクは「2199」だけってつもりで、シリーズ全キャラに出番を与えているのかも。
でもって、「2199」続編も、当然、今の総監督が続投するための布石が、「ヤマト宇宙」の継承ではないか。
ヤマト宇宙とは、
*真空の宇宙空間なのに、煙が発生し、たなびく。
*宇宙は海に見立てているため、ヤマトの吃水線から下は戦闘域とは考慮しない。
*同様の理由から、宇宙戦艦は艦底に武装を持たない。
*無重力の宇宙空間でも、爆発や戦闘機に、「落下」「降下」の描写がある。
----等々で、これは当初はアニメスタッフの無知に起因し、後にはプロデューサーの権限を示すために、あえてこのように描かれたので、
せっかく変える機会の21世紀のリメイクで、なぜ踏襲するのか疑問である。
宇宙空間で煙が延々と発生し、たなびくという不思議な描写は、
5話だけでなく、1話にも見受けられた。
放物線を描き、「下」に落下していく爆発とか、
いかなる法則の為せる技で、偏向ビームがこんな不思議な軌跡を描くのかの理由が、
もしかして、
「ヤマト宇宙を知り尽くしているからこそ」
だというのであれば、続編だって、この奇異な現象を平然と描ける人にカントクしてもらうしかない。
というわけで、矛盾を承知で、あえてこうやってるんじゃないかと考えるのは、さすがに穿(うが)ちすぎだろうか。
「そんなところだけ、故人の意向に沿ったって」という気が、どうしてもしてしまう。
6話の感想に続く。
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