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ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~

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ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~

同番組は、BSプレミアム:2023年3月31日(金)午後10:00〜11:18で放送された。

 

映画監督の庵野秀明が『シン・ゴジラ』以来、実写としては7年ぶりに監督をする『シン・仮面ライダー』。52年前、当時小学5年で大きな衝撃を受けた『仮面ライダー』を、庵野監督が自らの手で現代によみがえらせる。主演に俳優の池松壮亮を起用し、手だれのアクション・チームを招集。「ノスタルジーと新しさを融合したアクション映画」を目指すが、この相反するテーマは、制作現場に大いなる葛藤と波乱を呼ぶことになる。

 

これが大変な反響を巻き起こし、

3月17日より公開中の『シン・仮面ライダー』の出来に不満だった視聴者の格好の攻撃材料となり、

これを取り沙汰したYouTube動画も後を絶たない

どれも我が意を得たりの内容で面白かったが、なにしろ自分は当番組を未視聴なため、

オンライン有料視聴とやらを利用しない限り、4月15日(土)のNHK総合テレビジョン:午後7:30〜8:48放送まで待つしかない…はずだった。

 

しかしたまたま視聴の機会が見つかり、飛びつくように見ました。

(視聴直後に見れなくなってましたけど)

 

4月15日まで待てない人は、

NHKオンデマンドで220円払ってみるしかないでしょう。

 

でもって私の感想は、一般視聴者の斜め読み的な見方とは異なり、

少なくとも大勢に迎合して、庵野秀明を糾弾する形には捉えなかった。

 

なぜなら番組中の『シン・仮面ライダー』のアクション撮影場面で、

庵野監督がダメ出しする様子と理由がよく理解でき、

単に協調性がないとか、巨匠の驕(おご)りやわがままでダダをこねているんではない事が伝わってきたからである。

 

 

最初にアクション監督(田淵景也)が提案し、ワイヤーを多用して撮られた場面は、

おそらくライダーの暴力性を示す冒頭シーンだったろうが、

私が見ても感心、納得できず、

もしもこのまま映画本編に使われていたら、作品の評価はさらに下がっていたに違いない。

 

この時点で庵野監督は、自分が意図している新しいアクションが担当者にまるで伝わっていないことにパニックになり、

だからと言って妥協して全ての行程にOKを出し続けるわけにもいかず、

回を追うごとにダメ出しの量が増えていく。

 

庵野の方からしても、アクション監督も役者も自分の意図をさっぱり理解していない事にイラ立ち、

逆の立場でも、自分の起用は過去作の蓄積に基づくのだから、溜め込んだパターンの中から最良解を提示することしかできず、

庵野監督の立場に立って代わりにやってみろと言われたって、読心術ができるからこの仕事に呼ばれたわけじゃないんで途方に暮れるしかない。

 

かくして誰もがどうしていいかわからず立ち往生や交通渋滞の状況が延々と続き、

まさにこの世の地獄状態が現出したわけだが、何も地獄は田淵景也や池松壮亮や森山未來だけでなく、

庵野の方だって生き地獄だったんだよ。

 

「これをボツにして差し替えが映画本編ってなんなん?」

とかの意見もよくわかるが、

庵野本人だってそれを重々承知しながら、ああいう形に落ち着けるしかなかった、他にどうしようもできなかったのがよくわかった。

 

そりゃあ私だって映画の出来には感心しないし、

こういう現場の軋轢(あつれき)が生じる前に、

もっとやれる事があった気はするけど…

 

「もったいぶらずに、それは何なのか具体的に言えよ」と問われれば、

最後の3人ライダー三つ巴のグダグダ泥仕合を引き締めるには、

せっかくそこに置いてある、初代サイクロン号のベース車2台を

2023/03/21

「どこに出てきたの?」なムダ背景に堕さないように、

それこそ実相寺アングルで殴り合いと言い争いを背景に置き、バイク2台をカットごとに交互に手前に置けばいいじゃないかって気はするけど、そんなのあくまで「個人の感想」でしかなく、完成作品に何ら寄与しないので言ったってしょうがない。

 

それとこの番組を見て意識を新たにしたのは、

①「庵野監督に観客目線はあるのか」

②「邦画・洋画を問わず競合他社の作品レベルに遜色ないようにマーベル作とかを研究(鑑賞)する対抗意識があるのか」

といった疑問に答えが出たこと。

②特に公開たちまちの作品バッシングに対する庵野信者の反論に「否定する人はマーベル級のビジュアルで満足すんなら、そっちだけ見とけば」的なのがあったが、意外や庵野自身も現在の映画界の現況を把握はしており、それでもパクリだけは意地でもやらず、マーベルに比肩する作品を当初は目指していたのは納得だった。

 

①それと現場での指示出しの時に、「自分も観客もそう感じるはず」と言ってるわけで、この人は一応、自分がこうしたいというだけでなく、観客の期待に応えたいという気配りもあるんだなと気がついた。デザインチームに招集された出渕裕(1958年12月8日生まれ)は、年下の監督(1960年5月22日生まれ)を番組内で「庵野くん」呼ばわりだったが、この人の監督作品に観客目線が不在なため、2012年の「宇宙戦艦ヤマト2199」以降、監督作品がゼロなくせによくも上から目線だよなと呆れたのとは好対照である。

 

現場の地獄絵図だけを番組から見取り、表層的な見地で「もはやパワハラ案件」と騒ぎ立ててる層もいるみたいだが、三つ巴の泥仕合の撮影で、アクション監督がいよいよ子分もろとも現場を離れようかとまで思い詰めていたところ、庵野監督から「ごめんなさい」と詫びの一言があり、それも形だけでなく涙ぐんでいたと言うから、庵野だって苦しかったんだろう。

 

また庵野流のこのやり方は、『シン・仮面ライダー』が特別だったわけではなく、

これまたNHKドキュメンタリーで取り上げられた『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021)でも同様だったし、

元をたどれば『シン・ゴジラ』でも大差なかった。

 

そういや、今回の番組の始まりは、

『シン・仮面ライダー』は東映の作品なのに、

2021年の東宝撮影所から始まっており、

それは『シン・ウルトラマン』が製作中だったから。

 

でもって私の評価が

  1. 『シン・ウルトラマン』
  2. 『シン・ゴジラ』
  3. 『シン・仮面ライダー』
なのは、庵野臭が少ないほど「まともな」映画だからで、
私だけでなく終映時に拍手が起きたのは『シンウル』だけだったし、
同作のまとまりの良さはすなわち、庵野が途中で『シンライダー』に抜けた怪我の功名だったと思い知る。
 
監督はディレクター/ダイレクター、
つまり指針や方向性を示す、目的地まで導く役割なんだから、
庵野にはその資質が致命的に欠けていることは間違いない。
 
だからなおさら、彼一人の独断専行を許しちゃイカンわけである。
 
そうそう、庵野の独自チョイスは常に選択ミスという話でいくと、
『シンウル』の評価が、他の『シン』2作より高いのは、
それだけ私の大キライな市川実日子が出てないからでもある。
ああ、それなのに…
ドキュメント「シン・仮面ライダー」~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~
は良作のドキュメンタリーで、曲解するのは視聴者のリタラシーの責任で番組のせいじゃないけど、
唯一ケチをつけるとすれば、ナレーションが市川実日子なこと。
 
アレルギーじゃないから名前を見てたちまち拒絶反応…ではなく、
「このナレーション、美声じゃないし口調もだらしないな。一体誰だよ?」と思っていたら、
ほどなく市川実日子とテロップが出て、
「ああ、やっぱり」とゲンナリ。
 
結局、誰もが自分の感性、直感を信じるしかないんである。
 
 
 

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