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映画 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』吹替版【後編】

映画  『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』吹替版【後編】

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この記事(『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』吹替版【前編】)の続き。

 

まずは前回の記事にいただいたコメント。

 

hitac

岡田斗司夫のアバターへの批判の件は
主人公が「侵略している側」の人間にもかかわらず、
かつての同胞を殺すことに何の躊躇も葛藤も表現されてない事なんで
それは妥当な批判ではないかと思いますが
そのうち描くのかもしれないですが、5部作の2作目にしては先を見据えたと思われる伏線がないのも気になります
 
ご指摘ありがとうございます。
たしかにその点はこちらの揚げ足取り気味でしたが、
再確認のために動画を見直すと再生回数が上がって相手の思うツボなので、
あえて中途半端な理解でやり通しました。
 
ところで、
主人公が「侵略している側」の人間にもかかわらず、
かつての同胞を殺すことに何の躊躇も葛藤も表現されてない
ーーについてですが、これって1作目で描くならいざ知らず、
13年後の続編で、
 
あらすじ
前作から十年以上が経過した、地球からはるか彼方の神秘の星パンドラ。元海兵隊員のジェイク・サリーはオマティカヤ族の一員となり、ナヴィの女性ネイティリと結ばれる。現在は息子のネテヤムとロアク、娘のトゥク、今は亡きグレース・オーガスティンのアバターから生まれた養女のキリ、そして人間であり、同じく亡きマイルズ・クオリッチ大佐の息子・スパイダーと平和に暮らしていた。

だが、その幸せは長くは続かなかった。ジェイク達の幸せを破壊するが如く人類が再びパンドラに来訪する。それによってナヴィの生活は破壊され、オマティカヤ族の戦士であり、トゥルーク・マクトであるジェイクは再び人類の武器を手に取りゲリラ戦に身を投じることになる。ダイアホースやマウンテン・バンシーに乗って強襲を仕掛けては人類から銃火器を奪い取り、抗戦するナヴィたちに対し、自分がいるから人類に狙われると考えたジェイクは家族と共にオマティカヤ族の下を去る決断をする。

 

ーーという筋立てなのに、わざわざ「自分は元は地球の海兵隊員だったから、相手を殺すのに気が引ける」心理状態を盛り込む方が不自然じゃないでしょか?

 

岡田斗司夫氏はなにしろバツグンに頭はいいので、彼の話を聞いてりゃ正論に聞こえますけど、

  • 「映画秘宝」にせよ町山智浩にせよ柳下毅一郎にせよ岡田斗司夫のYouTube動画にせよ、映画評論や分析は映画があってこそだし、作品は後世まで残っても批評は一過性の消えもので後まで残らない。そこらへんをわきまえて映画へのリスペクトがあってしかるべきだし、主従関係の逆転はあり得ないことをわきまえるべきだが、そこをすっかり勘違いしているところが嘆かわしい。
  • 映画人がコツコツと作り上げた映画を、口から出まかせのしゃべくりだけで良否を断じ、映画作品そのものよりも自分の動画を優位に立たせる人が本当に正しいのか。これが元クリエイターだった人のやることか?結局はどれも個人チャンネルの再生数を上げるためのエサでしかなく、映画界の質の向上にはなんら寄与しない。
  • 名批評家が名作映画を生み出せるわけではない。お笑いコンビかもめんたる岩崎う大は、Youtubeやnoteでは『キングオブコント』『M-1グランプリ』『R-1グランプリ』『THE W』などの賞レースのネタ批評をし、昨今、高度化しているお笑いの伝わりにくい部分を理論的に補填し視聴者に伝えるという”芸人を批評する芸人”という稀有な存在となっている。しかし2022年の『M-1グランプリ』ではかもめんたるは敗者復活戦を勝ち抜けず、名批評家必ずしも名パフォーマー/エンターテイナーにあらずを実証している。またデビュー作『激怒 RAGEAHOLIC』が高評価好成績だった高橋ヨシキ氏でさえも、2022年のベスト作品には自作を入れはせず、本人は遠慮もあるだろうが同じ動画配信の仲間でもさすがにそこまでは推さなかった。

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  • 今後いくら待っても岡田氏は後出しジャンケンしかしないから、「それほど鋭く映画を見抜いているなら、ぜひご自身で映画を作って見せてほしい」と期待しても無駄である。
 
さて、またしても前置きが長くなったが、
『大怪獣のあとしまつ』のように前・中・後編の3記事に分けず、本記事で完結するが、
  • 失敗作を見つけるとたちまち「どうしてこうなった」ともっともらしい分析動画が横行するが、作り手は失敗作をわざと作ろうと思ってなどいないから「なるべくしてそうなっている」。
  • 公正な評価とは、達成できた点をまずは認め、至らない点や不具合、いわゆるツッコミどころによる値踏みや減点はその次なはず。
ーーの2点の観点から、私は 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』にひたすら感心し、ジェームズ・キャメロンのクリエイター精神の成熟ぶりにひれ伏す思いだった。
 
本作で顕著なのは、自作を含めた過去の映画名作を突き詰めて見返すと至らない点、ダメポイント、「んなわけねえだろ」なツッコミどころが満載なので、ではそれらを全て取り払った、キャメロン版の他作アップデート版、自分なりの過去類似作の別バージョンに挑んでいることではないか。
 
「そんなの無理だ」「どうせできない」とあきらめてしまわず、なぜ無理と思うのかを考えて、不可能と思わせる要素を取り払っていく。
 
映像化が技術的に不可能だという言い訳は、どんな映像も視覚化できるCGの発達によりできなくなったが、今度は「せっかく映像化の技術はあっても、いざ何を具体的に映像化したいのかというアイディアに枯渇する」事態にキャメロンも直面。そこらへんは苦手なので、
 

『ターミネーター』(1984)設定の一部について、1963年のテレビドラマ『アウター・リミッツ』のハーラン・エリスンが脚本を担当した2つのエピソード(第33話「38世紀から来た兵士」、第37話「ガラスの手を持つ男」)から剽窃(ひょうせつ)したものである、との訴えがエリスン側から起こされた。結局、キャメロンは80万ドルを支払い、ビデオ化以降のエンドクレジットに「Acknowledgement to the works of HARLAN ELLISON」(ハーラン・エリスンの作品に謝辞)と追加することを条件に和解した。

「38世紀から来た男」
未来から戦いしか知らない男がタイムスリップしてきて、愛や平和といった未来では存在しない感情や常識に触れていくことで、少しずつ人として変化していくストーリー。
「ガラスの手を持つ男」
高層ビルの中で、なぜか異星人に狙われるガラス製の手をもつ男が、奪われた指(実は指は記憶回路である)を一つずつ取り戻していく。それにより、自身が背負うことになった重大な使命を思いだすというストーリー。
過去のジャンル映画の名作で、今にして思えば「んなわけねえだろ」な作品の現代改善版を築くことにした。
反面教師としてモチーフになった筆頭は『スター・ウォーズ』サーガで、
  • 恒星間航行用の宇宙船は、海上の船舶のような重力下の階段状フロア構造のはずがない
  • 別の惑星の大気が、マスク越しでなく生身で吸えるほど都合が良くはなかろう
  • 異種異星人間の交流には、言語、文化、文明の違いだけでなく、サイズの不釣り合い(身長差)だってあるはず
  • 「氷の惑星」「砂漠惑星」と惑星ごとに気候が限定されるはずなく、一つの惑星にも森あり海ありと多様なはず
  • 三部作でまとめるのではなく、取り上げたテーマを存分に語り尽くすには五部作が必要
ーー等々が吟味され、『スター・ウォーズ』以外の類似作品からの参考事例なら、
  • 陸戦パワードスーツの形態と、水中メカの形態は根本的に異なるべきで、『機動戦士ガンダム』のモビルスーツは思慮に欠けまくり
  • スタートレックIV 故郷への長い道』(1986)以来36年ぶりに、海棲哺乳類の生存権(人権ならぬ鯨権/トゥルクン権?)もまた人間同様に侵されるべきではないことをしっかり盛り込もう
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zennkai
ーーが果たされてるんだから、岡田氏もまずはそこに敬意を払うべきだろうに。
 
例えばですよ。
キャメロンが史上最高の制作費をかけて『タイタニック』(1997)を撮り、
どうせ大コケするさの世評を覆して当時歴代1位の興行記録を打ち立てた後、
 
もう新作映画を撮らないでいいやと早々引退。「最近どうよ?」と黒見明香(くろみ・はるか/乃木坂46)のように訝(いぶか)しんでたら、
 
↓同期の林瑠奈に、5期に先輩風を吹かせる様子をいじられる
 
いつの間にかユーチューバーにデビューして、よそ様の作品の欠点をあげつらってバカ映画呼ばわりし、姑息に視聴回数で稼ぐようになったら、あなたはどう感じますかね?
 
キャメロンは子供の頃からフィルムメイカー(映画作家)志望だったが、自分が作りたいと思っている映画の理想形(15歳の時に見てハマり、映画館で10回も見た『2001年宇宙の旅』)に近い新作が一向に劇場公開されず、トラック運転手などで生計を立てていた。
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しかし『スター・ウォーズ』(1977)を観て「自分の目指す映画を作った奴がいるじゃないか、トラックなんか運転してる場合じゃない!」と一念発起。
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『宇宙の7人』など、いくつかの作品のスタッフとして関わったのち、デビュー作『殺人魚フライングキラー』(1981)を監督するが、撮影の終盤でプロデューサーに降板させられ、作品の完成にまで関われなかった。このため、キャメロンは今でもこの作品については触れたがらない。
メキシコで海のシーンを撮影後、「こんなキャリアを続けていても絶対浮かばれない」と打ちひしがれて安宿で寝込むと、夢の中に炎の中に立ち尽くす金属骨格が出てきたんだとか。
このイメージを元に『ターミネーター』(1984)を制作。このシナリオが認められて『ランボー/怒りの脱出』(1985)『エイリアン2』(1986)のシナリオも担当。続編脚本の名手となり、自作の続編『ターミネーター2』(1991)でも大成功を収める.
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『ターミネーター』シリーズの脚本に関しては、核戦争後に荒廃した未来戦争のシーンは、「脚本では好き勝手に書けても、映像化は技術と予算の制約がある」と認識。思えば『アバター』シリーズでの技術的制約も予算も気にせず映像化に努める姿勢は、キャメロンが映画界でそこまで上り詰めたからこそできることであり、他の誰にもできない挑戦課題と言えるだろう。
 
あいにく『ウェイ・オブ』は日本では不入りのままなため、3時間強(192分)を占有されるIMAX  3Dは早々退散。
公開5週目からは、上映時間が近い(182分)『RRR』((アールアールアール・2022)に差し替え。
 
しかし世界的には興行成功で、20億ドル(2611億円)を突破したそうな。
2023/01/24
 
まあ、光の明滅に過敏な人が敬遠するのは仕方ないけど、
 
チャッP 
昨年のクリスマス、
ボクはディノスシネマズ苫小牧で「アバター」の13年ぶりの続編を楽しみにして行ったのですが・・・、
「本編の一部に画面が点滅するシーンがある」との注意喚起文を見て、泣く泣く「Dr.コトー診療所」に差し替えました(愕)。

「バベル」(2007年)や「スカイウォーカーの夜明け」の時もそうでしたが、
こうした話題作が問題シーンだけで興行収入を低下させるのは・・・(情)。
 
いっそ『アバター3』は、猫に小判な日本では非公開にしてもいいんじゃないの?
「君たちは岡田動画のケチつけで満足してなよ」って感じで一つ。
劇中登場キャラで白眉だったのはキリ。
どんな若手女優が演じているのか、さすがにアメリカ映画界は層が厚いなと感心しきり。
演じたのは母親役のシガニー・ウィーバーだそうで納得!
 
私の 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』感想は以上です。
 
 
 
 
 

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