これ(スカウト・ウォーカーの変貌/まつわるエトセトラ〈その4〉)の続きで、
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ブログ開始早々に取り上げた
ウォーカー裁判を、
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あらためて詳細かつ正確に振り返ることにする。
※あえて読み返すまでもありませんが、一応。
【前編】
【中編】
【後編】
ルーカスフィルム/ILM社内では、
↓四脚型AT-ATだろうが、
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↑二脚型スカウト・ウォーカーだろうが、
とにかくウォーカー(歩行兵器)に関しては、
どこからどれだけパクろうと、
なんの問題もないと考えていたが、
おもしろくないのは、
↓天下のルーカスフィルムともあろうものに、
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↑自分の描いたデザインを無断で丸パクリされた、
リー・サイラ-氏。
おそらく、映画『帝国の逆襲』(1980)をみただけでは気がつかず、
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↓『帝国』スケッチブック(THE EMPIRE STRIKES BACK SKETCHBOOK)
という書名のデザイン集の
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↑中身を見て、自分のデザインまんまのコピペぶりに、
ガクゼンとしたに違いない。
(※当時コピペという俗語はなかったが)
そこでサイラー氏は、『帝国』翌年の1981年に、
ルーカスフィルムに、
「盗作の損害賠償について、話し合いの場を設けて欲しい」と手紙を送るも、
先方の顧問弁護士からは、
「話し合うことは何もない」とつれない返答が、
何ヶ月も経って、ようやく届いた。
やむをえずサイラー氏は訴訟の準備を進め、
盗作の証拠として挙げたのは、
サイラーのデザイン画を買ってくれた顧客リストに、
デニス・ミューレンの名前があることだった。
※前回、
ジョンストンにサイラーのイラストを手渡したのは、
デニス・ミューレンだった
——と特定したのは、この事実より。
サイラーは、
パクリが明らかなのは、わずか2カット出演の二脚型だけなので、
それじゃ訴えるのに弱かろうと、
「四脚型だって、オレのパクリだ」説に基づく、
新たなイラストを、この1981年に描き起こす。
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設定は以下のとおり。
ガーシアン・ストライダー 中型攻撃/兵員輸送ユニット
80トン 最高時速40キロ
「地球の戦車とは異なり、ガーシアン・ストライダーは二本足で“歩行”する。
銀河各地の様々な地形に対応するには、これが最適な方式だから。
ガーシアンという(架空の異星)種族から見れば、
人類など虫けらに等しい、取るに足らない存在なのだ」
——リー・サイラー 1981年
『ジェダイの復讐』(当時邦題)の1年後の1984年、
サイラーは、
ジョージ・ルーカスと
↓ルーカスフィルム、
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↑20世紀フォックス等を相手取り、
数百万ドル規模の訴訟を起こした。
訴えの内容は、
『帝国』と『ジェダイ』に登場する
ウォーカー(歩行兵器)は、
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AT-AT(四脚型)かAT-ST(二脚型)かを問わず、
どのみちサイラーのデザインの盗用である。
損害を被った立場から、
ルーカスフィルムはウォーカーのデザイン使用を中止し、
今後公開する『帝国』『ジェダイ』のフィルムから、
ウォーカーの映像を全削除することを要求する。
——という、デジタル技術のない当時としては、
「さすがにそれはどうなのよ」なものだった。
原告(訴える方)のサイラーの肩書きは、
ハリウッドのセットデザイナーとなっていたが、
この経歴を示す記録はない。
損害を請求するには、
デザインを盗作されなければ、本来は自分でこう使い、
そこからしかるべき利益をあげていたはずという裏付けを示さねばならず、
サイラーの肩書き詐称は、そのためのハッタリだろう。
ただしサイラーは1979年に、
恐竜のストップモーション技法についての本
“Building Beings, Creating Creatures and Doing Dinosaurs”
『生物の骨格作り、クリーチャーの造形、恐竜のアニメーション技法集』
を、ミッチ・イクタ(Mitch Ikuta)と共著で、
クリフリッジ・パブリッシング(Cliffridge publishing)
という版元から出している。
1981年には、
サイラーがストップモーション(コマ撮り撮影)アニメ用にデザインした、
ウォーカー(ストライダー)のブループリントが、
"The Garthian Culture: An Alien Profile"
「ガーシアン文化~あるエイリアン種の片鱗(へんりん)~」
と言う本にまとめられた。
サイラー氏は裁判で、
自分のデザインは1976年の6月に描いたもので、
その後のSF/コミックコンベンションで販売したと主張。
裁判は1986年に結審。
原告は、
●リー・M・サイラー(LEE M. SEILER)
被告は、
●ルーカスフィルム
●ILM
●20世紀フォックス
●ジョージ・ルーカス
●ジョー・ジョンストン
サイラーは、ガーシアン・ストライダーと称するSFクリーチャー(機械生命体)の、
デザインの意匠登録を取得したのは1981年だが、
発表したのは1976年と1977年だと主張。
しかし登録した1981年に提出したのは、
オリジナルではなく、『帝国の逆襲』(1980)の公開後に、
描き直したものだった。
7日にわたる意見陳述の中で、
サイラーは『帝国の逆襲』公開前に、
自分のデザイン画が発表され、
販売されたことを実証できず、
本人は、それができない理由を、
原画は探しても見つからず、
うかつにも破棄してしまったかも知れないと主張。
また、1981年より前に、ブループリントが販売されたという証拠も示せなかった。
↓法廷でサイラーが提出したイラストはすべて、裁判のために改めて描き直したものだった。
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↑この2点は、2009年にサイラー氏本人に直接連絡を取り、画像提供してもらったものだから、このブログ以外では、発表されてないはずざんす。
結局これ以上の証拠がでなかったため、サイラー氏は敗訴となった。
サイラー氏に画像提供いただく際に、
●控訴したかったが、追加の訴訟費用がまかなえず、断念した。
●1976年に描いた原画は紛失した
——とのことなので、
上掲の2点を「これですよね」と送ってみたが、
それに対する返答はなし。
人間、欲をかいて、あれこれ盛ってしまうと、
本来得るべきものまで失ってしまう。
サイラー氏は、現在では
『海底二万哩』(1954)に使用されたノーチラス号のモデル研究の第一人者として、
立派なサイトを持ち、
そこでの最新更新は2015年の3月だから、
今も健在である。
またこの記事の出展は、スターログ…ではなく、
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『シネファンタスティーク』でした。
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↑『シネファンタスティーク』通算14号。1984年11月号(9月発売)
ウォーカー裁判の話はこれでおしまい。
「~にまつわるエトセトラ」は、まだ続きます。
※明日(日曜日の深夜=日付は月曜日)の更新はありません。
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裁判再検証/スカウト・ウォーカーにまつわるエトセトラ〈その5〉
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