これ(「ギンガ、ギンガ、ギンガ」・前編)の続き。
※英語記事からの再変換、適宜編集、脚色のため、
事実証言と語句が一致しませんが、悪しからず。
「宇宙戦艦ヤマト」の初期案「アステロイド6」
(1973年4月下旬に、豊田有恒氏に依頼)は、
〈アステロイド号〉の乗組員の6人が、別個の惑星を訪れ、それぞれが重要なアイテムを入手して船に帰還する話。
小沢さとる氏の未発表作品「ギンガ、ギンガ、ギンガ」
(1966年に、200ページの鉛筆下書き原稿が存在)は、
戦艦大和を模した宇宙船〈ヤマトワンダー号〉が、3つの銀河を旅して、必要な物資を手に入れていく話。
----というわけで、ほぼ同時期に、似通った話が、共通のデザインコンセプト(=戦艦大和の宇宙版)で、まったく別々に展開していた。
それだけに、西崎氏は小沢氏の自宅で見せられた原稿に、思わずうなったという。
その影響もあって、「ギンガ、ギンガ、ギンガ」のビジュアルのいくつかは、
実際に「宇宙戦艦ヤマト」の設定や本編に引き継がれている。
↓小沢氏が「ギンガ、ギンガ、ギンガ」作品中で描いたヤマト(~ワンダー号)は、当初より艦首がグンとせり出した、強制パースで描かれていた。
↑アニメ劇中では印象的な、ヤマトの強制パース像はしかし、設定資料で最初に描いたのは松本零士氏ではなく、スタジオぬえの加藤直之氏。
↓(上)パイロットフィルムより。宇宙戦艦ヤマトには、斜め俯瞰の設定が久しく存在しなかった。
↑(中)小沢さとる氏による、建造中のヤマトワンダー号を斜め俯瞰で描いた下書き原稿。
(下)第2話より、建造中の宇宙戦艦ヤマト。
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この、あまりにもおあつらえ向きの状況に、
西崎氏は、小沢氏に当然、「宇宙戦艦ヤマト」への参加を切望したわけだが、
意外にも答えはノー。
「なんでまた?」と問えば、
「いや、ヤマトの乗員に、女がいるはずないから」との答え。
↓岡迫亘弘氏のキャラ表決定稿は、時期にもよるが、松本零士氏の素案よりも、小沢さとる氏の「ギンガ、ギンガ、ギンガ」のキャラに制服デザインの共通項が多い。
↑(左)「ギンガ、ギンガ、ギンガ」で、宇宙空間に浮かび、祈りを捧げる裸身の美女。
まさに「さらば宇宙戦艦ヤマト」(1978)の、テレサ(右は荒木プロによる原案)そのもの!
↓ただし、松本零士氏の描いたテレサには原図があり、
↑それは1973年2月に発売された、C・L・ムーア著の「暗黒界の妖精」のハヤカワ文庫の表紙。
ヤマト関係者の「ギンガ、ギンガ、ギンガ」未発表原稿の閲覧は1974年4月なので、似ているのは偶然の一致。
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小沢氏は、西崎氏の企画に乗っかるつもりはなく、
あくまでも自作「ギンガ、ギンガ、ギンガ」をアニメ化するつもりだったようで、
その航海は、一世代では終わらない長い旅になる予定だった。
そこで赤ん坊を冷凍睡眠状態で艦に積み込み、男性乗組員たちは旅を続けながら、子育ても同時に行うという設定だった。
↓芹那っぽい顔つきの、小沢氏の描いたこの女性像は、「母親」の代表イメージだった。
銀河への旅立は
まだ甘えていない
母の乳房と
こいしい肌のぬくもりに
別れを告げて
母の涙に見送ら
れて まだ覚えの
ない 地球を
あとにする
ことだった
‥‥。
こうまでして女性乗組員を避けたのは、
終戦時に中学生だった小沢氏の
「軍隊に女がいるわけない」
という固定観念にもとづくのだろう。
西崎案「ヤマト」にも、先の大戦の影響は色濃いとは言え、
少なくとも女性隊員一人
(まだ「森雪」という名前はなかった)
は乗り組むことが決まっていて、
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↓(左)小林恵美みたいな、「アステロイド6」の女性乗組員のデザイン画。右の全身図と共に、イラストレーターの斉藤和明氏の作。
↑山本暎一氏の描いた、宇宙戦士B班リーダー、胸が大きいところまで川村ゆきえみたいな、神麻知子(じん・まちこ)。
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それを伝えるや、
「だったらボクは参加しませんよ」
と即答の小沢氏の態度と発言は、
ここまでトントン拍子に話が進んでいると思い込んでいた西崎氏には、
ゴネているか、屁理屈のようにしか受け取れなかった。
イラ立ちを隠せない西崎氏は、
「参加しませんって…あんた以外の誰が、ここまでやれるって言うんだ!」
と声を荒げた。
しかし小沢氏はつとめて冷静に、
「松本零士クンなんかどうよ? 彼だって艦(ふね)を描くだろ」
と助け船を出した。
西崎氏が小沢氏宅を後にするやたちまち、松本零士氏に急遽コンタクトを取ったのは、いうまでもない。
時に、1974年4月頃。
****************
松本氏の「ヤマトは私が手がけた」説を裏打ちする目的で、
昨年急逝した伊藤秀明氏が編纂し、2010年の12月に発行された、
宇宙戦艦ヤマト大クロニクル。
後述する理由により、ほとんど一般に流通しなかった本書には、まんだらけのみで販売された、着せ替えカバーの購入特典付きの、ゴールドverが存在する。
松本零士氏本人が描き、アニメ本編に登場した、稲森いずみ似のスターシャ(スターシア)の躍るこの着せ替え表紙は、往年の「宇宙戦艦ヤマト全記録集 設定 資料版」のデザインを踏襲している。
生前に、この本のゲラに目を通した西崎氏は、
「デタラメばっかり並べたてやがって!」
と激怒し、当然出版を許さなかった。
ところが氏の没後に、実写版キムタクヤマト公開にタイミングを合わせて強行発売された本書を、遺された関係者は、書店、通販等の流通から一斉に撤去を指示。
そのため、Amazon.comにも社内在庫はなく、
出品者からの購入となる。
----と伝え聞いたが、
内容は旧知の事実と大きくそれることなく、
どこらへんが、どんな風に「デタラメ」なのか、
当時はわからなかった。
それから3年余を経て、今ようやく、なるほどと思う次第。
もちろん、松本零士氏は、ウソをついてるつもりはない。
*自分が関わってからは全行程にたずさわり、
*それまで停滞していた企画を一挙に具体化させた
という意味で、
「全部、自分がやった」
と主張してるわけなんだが、
西崎氏としては、
「最後に参加しておいて、その言いぐさはねえだろ!
小沢さとるの推薦がなけりゃ、企画に参加さえ、あり得なかったくせに。
それまで無名に等しかったあんたを、表舞台にのし上げてやったんだ。
こっちが発掘してやらなかったら、
ずっとマイナーなままだったくせに!」
って気持ちだったんだろう。
なにしろとにかく、「全部、自分がやった」なんて、ありえない。
この話はまだ続きます。
おまけ・今日のまとめ
内容がずいぶんと殺伐として来たので、
今回の記事に彩(いろどり)を添えた女性陣に再登場していただき、
憩(いこい)といたしましょう。
もちろんシャレに過ぎませんけど、
40年前には、
「そんなマンガみたいな女性、現実にいるわけねえだろ!」
だったのが、
あながちそうもいえなくなったのが、現代だというわけです。
その意味もあり、選定した女性の写真は、
つとめて2012年以降の最新で揃えています。
絵が誰に似てるか考え、その女性の関連グッズを探すと、
くしくも絵そのもののアングルの画像が次々に、しかもおあつらえ向きに近年のもので続々と見つかったのには、もうホント、ビックリですよ!
昔の人でやってみても、
せいぜい一例ぐらいしか思い浮かばないのも、
現代こそ、マンガ・アニメ顔の美女の時代だと言うことを象徴しているように思われ。
それではまた。
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