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【その2】ネタバレ雑感『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

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【その2】ネタバレ雑感『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

これ(ネタバレ雑感『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』【その1】)の続き。

 

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』鑑賞から

1週間以上が経過したので、

がっつりネタバレしますから、

鑑賞前の方は絶対に読まないで下さい。

 

つとめて他では読めない内容をこころがけてはいますので、

お時間とご興味ある方のみ、おつきあいください。

 

——前回は【その1】で話があまり進まず、

読者の中には「無駄に引っ張りやがって」と感じる人や、

「もうこの際“他では読めない内容”なんてどうでもいいから、

もったいぶらず単刀直入に代表的なネタバレ意見/感想の方が聞いてみたい」

と感じる人もいるでしょう。

 

そんな人たちには、

ブログ記事ではこれ。

YouTube動画では、

これがオススメです。

 

この記事作成中の2022/01/16にライブ配信された

この動画(【映画批評】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』/高橋ヨシキ×てらさわホーク×柳下毅一郎【ネタバレ】)

私の論旨が先回りされてしまうかもと危惧しましたが、

2時間越えの動画を完全視聴しても、その点は“かする程度”で済んだので安堵しました。

 

では気を取り直して本題ですが、

前回は、

本作登場の5人のヴィラン(悪役)、

  1. ウィレム・デフォーが演ずるグリーン・ゴブリン/ノーマン・オズボーン
  2. アルフレッド・モリーナが演ずるドクター・オクトパス/オットー・オクタビアス
  3. トーマス・ヘイデン・チャーチが演ずるサンドマン/フリント・マルコ
  4. リス・エヴァンスが演ずるリザード/カート・コナーズ博士
  5. ジェイミー・フォックスが演ずるエレクトロ/マックス・ディロン

が、『ノー・ウェイ・ホーム』の

“ホーム三部作”前2作、

トム・ホランド主演の『ホームカミング』(2017)
過去のトビー・マグワイア主演作3本か、
tobi-
アンドリュー(アンドゥルー)・ガーフィールド主演作2本
たいひ
からの登場なため、
設定/プロット/ドラマを完全理解するには、
全作の鑑賞が前提となる。
——というところまで。
 
この条件下で何が起きるかというと、
ドクター・オクトパスがトムホ版ピーター・パーカーと出会った時に、
なにしろ別世界の住人なため、互いの存在を知るはずもないから、
「おまえ誰やねん?」と困惑し合う。
 
ところがこの、劇中キャラの不案内さをながめつつ、
『スパイダーマン2』と『ホーム』連作を鑑賞済みの観客の方は、
「私はちゃんとわかってますよ」と優位に立てる。
 
この後も同じことがさざ波のようにくり返されていくため、
観客の過去作鑑賞歴の深さ浅さに伴い、
感慨もそれなりの影響は受ける。
 
たとえば私は、ネットフリックス配信ドラマ『デアデビル』のことを全く知らず、
当然1本も見ていないから、
『ノー・ウェイ・ホーム』のかなり冒頭にマット・マードック(=デアデビルの正体/演:チャーリー・コックス)が登場しても、その仕掛けがわからなかったし、
『アメイジング2』は映画館で鑑賞せず日テレ放送版を観ただけなので記憶があいまいで、ジェイミー・フォックスが演ずるエレクトロ/マックス・ディロンの髪型が、ドレッドヘアから短い刈り込みに変化していることには気づかなかった。
 
とにかく『ノー・ウェイ・ホーム』の滑り出しで、大前提にファンサービス、
つまり登場キャラよりも観客の方がドラマに精通しているという仕組みをなるほど理解はしたが、
作り手はなんでこんな掟破りな大改変を繰り出したのかと、
いぶかしながら鑑賞を続けていた。
 
そしたらドクター・ストレンジ(演:ベネディクト・カンバーバッチ)が、
トムホピーターが魔法の途中であれこれ変更指示を加えた影響で、
マルチバースから引き寄せられたヴィランを、
ならば元の世界に戻そうと提案。
 
それであっさり解決するなら、
この大げさな世界観の変更(劇中キャラ目線ではなく、観客目線でメタ構造的にドラマが進む)はなんだったんだと勘ぐっていたら、
ピーターはそもそもストレンジの魔法にあれこれと細かな注文をつけたのがトラブルの元凶だったのに、
個々のヴィランは元の世界に戻ればスパイダーマンとの戦いの結果倒される(スパイダーマンが直接手を下さずとも)と知って、
帰す前に各ヴィランの改心につとめたいと、またしても注文をつける。
 
懲りないヤツ…。
 
「ってことは、各ヴィランは各自がくたばる直前から来たってわけか。グリーン・ゴブリンのオダブツは、ドク・オック登場より前だから、別の時間軸から来たってことね」
とか、
「改心も何も、サンドマンは本来の世界でもスパイダーマンに赦(ゆる)されて戦わずして退場したんだから、トムホの試みはムダなんじゃ…」
という疑問が頭をもたげつつ、
どうやらこれは、この後の“あるしかけ”を弾かせるために、わざと事態の解決を先延ばしにしてるんだろうなと察しもついた。
 
マルチバースの操作と修復がドクター・ストレンジにしかできないと、
この先話が進まないため、
トムホピーターの親友ネッド(ジェイク・バタロン)も、
祖母から受け継いだフィリピン系の呪術のマネゴト?で、
別世界とつながる穴=ポータルを開通させる能力を唐突に身につけ、
「ピーター・パーカーに会いたい」と言う一念から、
別次元の2人のピーター・パーカー、
アンドリュー・ガーフィールド版と、
トビー・マグワイア版を次々に呼び寄せてしまう。
 
ここに至って、
「なるほど、これがやりたかったわけか!」と納得したら、
あとはもう、そのジェットコースター的な展開に身を任せ、
あちこちに仕組まれた更なるしかけを存分に堪能。
 
ところどころで落涙しながら、
鑑賞後には、
「これはすさまじい革命作に巡り逢ったな」と、
居合わせた観客の「年頭作でも、今年のベストかも」と言う感想や、
町山智浩氏の感想に完全同意。
 
このブログの愛読者で、わざわざコメントを下さる方々も、
そこらへんは心得ていて、
 
hitac
 
似たようなものはライダーやら戦隊やらウルトラやらでいくらでも見ていて耐性がある日本人の自分でも、あの展開にはぐっと来てしまうわけです。
脚本が凄くて「見てきた」人間にもそうでない人間にもちゃんと通じるようにものすごい量のネタが仕込んである。
あと撮影技術が凄かった。
ラストのマジックアワーから朝焼けのシーンは、どうやったらあんなふうに撮影できるのだろうと。
 
チャッP
 
まさしく“スパイダーマン映画・20年間の総決算”的な作品でしたね
先代と先々代のスパイダーマン俳優や、ヴィラン達が続々登場して…
まるで8年前(2014年3月31日)の「笑っていいとも!グランドフィナーレ 感謝の超特大号」みたいな豪華さでした(爆)。

エンディングで“アヴィ・アラド氏に感謝”のメッセージが書いてあって、思わず涙…。
20年間、本当にお疲れ様でしたと言いたいです。
 

——と、この映画の本質をズバリと心得て堪能した様子が伝わって来る。

 

劇中キャラより観客を優位に立たせる接待映画の本作の主旨は、

おそらく以下の通り。

 

クリエイターとキャストが良作を生み出し続けたのに、

会社(ソニー/コロンビア映画)側の身勝手な興行/経営的判断に振り回され続け、

20年間でスパイダーマン映画シリーズが3回もリセットされて、

そのたびにスタッフ/キャスト総交代で振り出しに戻りながらも、

ファン観客が「スパイダーマン映画はもういいよ」と見捨てたり愛想を尽かさずに、

新作公開たちまち詰めかけてくれることに報いたい。

 

だからこその「集大成総括的」な内容で、

「オールスター感謝祭」的であり、

ご本人登場のサプライズ/ドッキリ企画になっている。

 

そのため、3人のピーター・パーカー/スパイダーマンに区別はつけても優劣はつけさせず、

全員が等位にケタ揃えされて、扱いが均等になっている。

 

それがわかれば、世界中のヒットと、

コロナで静粛鑑賞が大切なんてどこへやら、

ガーフィールドの登場で、「ノー、ノー、ノー!」(おいおい、まさかまさか?)の大絶叫、

その後を察した観客の、「トビー、トビー!」の期待の大合唱に結びつく。

(※海外のリアクションビデオ数本で確認)

 

ところが、なぜか日本だけは、こうした「心得た」圧倒的肯定派は半数にも満たず、

ネタバレ回避で映画館に詰めかけた初期動員が落ちついてしまえば、

日本の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』興行も早一区切りかとでもいうように、

公開週こそトップだった興収が、

今週は3位に落ち込み、2位は『呪術廻戦』、1位は『コンフィデンスマンJP』だから、こりゃダメだ。

 

全否定ではないけど、モヤモヤするという層が全肯定派の倍ほどもあり、

こういう正直な意見まで出て来ると、

 

たとえば野球のオールスター戦を観戦に行って、

「オレはオールスター戦より、ふだんのリーグ戦がみたいんだよ」と文句を言ってるような気がしてならない。

 

「だったらそもそもなんで、オールスター戦を見に来たんだよ」と言われたら、

「いや、それはネタバレ事項で事前に知らされてたわけじゃないし…」と反論されるんだろうけどね。

 

話の辻褄が合わなくてモヤモヤするって人は、

ガーフィールドとマグワイアの再登場がツボじゃなかったんだから、

あの後もネッド君が延々と、トムホ版ピーター・パーカーが出て来るまで、

無限に空間に次々と穴を開け続け、

無数の別バージョンの、“こいつ誰やねん”ピーター・パーカーを何人も出し続けた方が満足だったのかも知れませんね。

 

………。

 

 

この話はこれで終わりです。

 

 

 

 

  

 

 


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